ワクチン

免疫抑制剤ごとのmRNAワクチンの抗体獲得率ってどのくらいなの?【新型コロナウイルス】

こんにちは、今回は「免疫抑制患者におけるmRNAワクチンの抗体獲得率」について取り上げていきたいと思います。

今回は、2021年6月にAnnals of the Rheumatic Diseasesに掲載された「Immunogenicity and safety of the BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine in adult patients with autoimmune inflammatory rheumatic diseases and in the general population: a multicentre study」の論文を紹介します。

英語が長いですが、簡単に言うと、免疫疾患患者において、mRNAワクチンによって、どれくらい新型コロナの中和抗体がついたか、またその安全性はどうであったかを大規模に調査した研究になります。

研究方法

  • 研究施設 : 前向き観察探索型多施設研究で、2020年12月から2021年3月にかけて、イスラエルの3施設(Tel Aviv Sourasky、Carmel、Hadassah Medical Center)で実施された。
  • 研究の登録人数 : 自己免疫疾患患者 = 686人、コントロール群(対照) = 121人
  • 人数の内訳 : リウマチ = 263人、乾癬 = 165人、脊椎関節炎 = 68人、全身性エリテマトーデス(SLE) = 101人、炎症性筋炎 = 19人、大血管炎 = 21人、ANCA関連血管炎 = 26人、その他の血管炎 = 19人
  • ワクチン : ファイザー/ビオンテック社製のmRNAワクチン(BNT162b2)を使用。
  • 評価方法 : ワクチンによる抗体獲得の評価は,2回目のワクチン投与から2~6週間後に実施。SARS-CoV-2三量体スパイクS1/S2糖タンパク質に対する血清IgG中和抗体レベルの測定により評価した.

mRNAワクチンの中和抗体獲得率について

● ワクチン接種後、免疫疾患患者の血清抗体陽性率は、対照群に比べて有意差をもって低いという結果になりました。(それぞれ86%(n=590)対100%(n=121)(p<0.0001))。

また、S1/S2 IgGレベルも免疫疾患患者の方が、有意差を持って低いという結果になりました。つまり、中和抗体価が低い傾向にありました (132.9±91.7 対 218.6±82.06 BAU/mL(p<0.0001))。

中和抗体獲得率低下のリスクがある因子や免疫抑制薬は?

  1. 高齢であること(>65歳)
  2. ステロイド
  3. リツキサン®︎(リツキシマブ)
  4. セルセプト®︎(ミコフェノール酸モフェチル)
  5. オレンシア®︎(アバタセプト)

以上の項目に当てはまる場合は、抗体価が低い可能性があります。

特に、リツキサン®︎(リツキシマブ)は、中和抗体陽性率がとりわけ低い結果となりました(血清陽性率39%)。

※ 結果の解釈について : 有意差が出たということは、統計的に差が出たという意味です。逆に有意差が出なかったということは、両者間で、結果に違いはなかったということになります。

疾患別、治療薬別の抗体陽性率 早見表

それでは、疾患別、治療薬別の陽性率早見表について見てみたいと思います。

補足として、ここでの統計的有意差の「有」とは、コントロール群と比べて陽性率が低かったということになります。

抗体陽性率統計的有意差
年齢 >65歳 n=246人195人 (79%)有(p=0.002)
疾患別
リウマチ n=263216人 (82%)有(p=0.02)
乾癬 n=165160人 (97%)
脊椎関節炎 n=6867人 (99%)
全身性エリテマトーデス
(SLE) n=101
93人 (92%)
炎症性筋炎 n=197人 (37%)有(p<0.001)
大血管炎 n=2120人 (95%)
ANCA関連血管炎 n=268人 (31%)有(p<0.001)
その他の血管炎 n=2319人 (83%)
表を改変して作成

続いて、気になる免疫抑制薬別の抗体陽性率についてです ↓

免疫抑制薬抗体陽性率統計的有意差
ステロイド n=13086人 (66%)有(p=0.02)
メトトレキサート + α n=176148人(84%)差はないが低い傾向あり
メトトレキサート単剤 n=4138人 (93%)
TNF阻害薬 + α n=172167人 (97%)
TNF阻害薬 単剤 n=121119人 (98%)
TNF阻害薬 + メトトレキサート n=2927人 (93%)
IL-6阻害薬 + α n=3737人 (100%)
IL-6阻害薬 単剤 n=1919人 (100%)
IL-6阻害薬 メトトレキサート n=77人(100%)
IL-17阻害薬 + α. n=4847人 (98%)
IL-17阻害薬 単剤 n=3737人 (100%)
IL-18阻害薬 メトトレキサート n=77人 (100%)
オレンシア®︎ + α n=1610人 (63%)有(p<0.001)
オレンシア®︎ 単剤 n=75人 (71%)差はないが低い傾向あり
オレンシア®︎ + メトトレキサート n=52人 (40%)有(p=0.008)
JAK阻害薬 単剤 n=2119人 (90%)
JAK阻害薬 + メトトレキサート n=2422人 (92%)
抗CD20抗体製剤 + α
リツキサン®︎ + α n=87
36人 (41%)有(p<0.001)
抗CD20抗体製剤 単剤
リツキサン®︎ 単剤 n=28
11人 (39%)
セルセプト®︎ + α. n=28
(ミコフェノール酸モフェチル)
18人 (64%)有(p=0.0013)
セルセプト®︎ 単剤 n=5
(ミコフェノール酸モフェチル)
3人 (60%)有(p=0.03)
表を改変して作成

※ + αは、単剤使用ではなく、メトトレキサート以外の免疫抑制薬を併用しているという意味です。

TNF阻害薬:エンブレル®︎(エタネルセプト)、ヒュミラ®︎(アダリムマブ)、シンポニー®︎、シムジア®︎

IL-6阻害薬:アクテムラ®︎、ケブザラ®︎

IL-17阻害薬:トルツ®︎、コセンティックス®︎、ルミセフ®︎

JAK阻害薬:ゼルヤンツ®︎、オルミエント®︎、スマイラフ®︎、リンヴォック®︎、ジセレカ®︎




mRNAワクチン(BNT162b2)の安全性について

まず、発熱や痛みなどの軽度の有害事象は、自己免疫性疾患患者と対照群で同程度でした。

また、免疫疾患患者ではワクチン接種後に新型コロナ感染症の発症や症状が出た症例はなく、対照群では軽度の症状がでた症例が 1 例ありました。

免疫疾患患者における主な有害事象としては、2回目のワクチン接種から数週間後に2人が死亡しました。

1人目はANCA関連血管炎患者で、ワクチン接種の3年前から低用量のプレドニゾロン以外の免疫抑制療法を受けておらず、寛解状態でした。2回目のワクチン接種の3週間後に、劇症型出血性皮膚血管炎を発症し、敗血症を合併し、死亡しました。

2人目は乾癬患者でコセンティックス®︎(セクキヌマブ)により寛解していましたが、糖尿病や虚血性心疾患などの複数の併存疾患を抱えていました。2回目のワクチン接種の2カ月後に心筋梗塞で死亡しました。

→ 論文上は、ワクチン接種と死亡の因果関係ははっきりしていないとしているが、長期的に観察、研究していく必要があるとしています。

その他、自己免疫性疾患患者で注目された有害事象としては、ぶどう膜炎(n=2)、口唇ヘルペス(n=1)、心膜炎(n=1)、帯状疱疹(n=6) が発生しました。

ワクチン接種後は、免疫疾患の疾患活動性はどう変化したか?

A) 概ね病態は安定していた。

下の表がワクチン接種後の疾患活動性の変化になります。オレンジ色のStable(安定、変化なし)がほとんどで、20%以下で改善(Improved)、増悪(Worsened)を認めた結果となりました。

ワクチン接種後の疾患活動性の変化

ただし、一定数でワクチン接種後に、病態が悪化する場合もあります。もし、接種後に発熱が持続したり、関節が腫れや痛みがましてきたり、身体に変化があれば、早めにかかりつけ医にご相談されることをお勧めします。

参考 ) Victoria Furer , et al. Ann Rheum Dis 2021 ; 0 : 1-9.

“今回のまとめ”
  • コロナワクチンの一つであるmRNAワクチン(BNT162b2、ファイザー社製)は、免疫疾患患者の大部分において、抗体陽性率は担保されており、安全性も許容範囲内であった。
  • ステロイド、リツキサン®︎(リツキシマブ)、セルセプト®︎(ミコフェノール酸モフェチル)、オレンシア®︎(アバタセプト)は、中和抗体獲得陽性率を有意に低下させたため、注意が必要である。

今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。参考になりましたら、いいね、コメントを頂けましたら嬉しいです🥝またTwitterのフォローもお願いします🕊

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