〜 The Point 〜
- 巨細胞性動脈炎は大型血管炎の一つであり、50歳以上で発症する。
- 典型的には、頭痛や側頭動脈の圧痛・腫脹を認め、その他顎跛行や下顎痛などの症状を認める。
- 急に目の前が真っ暗になった、急激に視力低下が起きたなどの症状があれば、巨細胞性動脈炎による症状も考慮し、すぐに眼科を受診する。
こんにちは、今回は巨細胞性動脈炎について取り上げていきたいと思います。以前は、側頭動脈炎と呼ばれていましたが、最近では巨細胞性動脈炎と呼ばれることが多いため、以下でも巨細胞性動脈炎と記載します。
巨細胞性動脈炎ってどんな病気?
巨細胞性動脈炎は、大型血管炎の一つで、『50歳以上の中年から高齢者の方に発症する』のが特徴です。これは、とても重要な特徴で、同じ大型血管炎の高安動脈炎は、発症年齢が40歳以下となっています。(診断基準において)
つまり、発症年齢の違いが巨細胞性動脈炎と高安動脈炎を分ける大きな違いになります。
日本の患者数は「700人程度」と報告されていますが、最近では、PET-CTなどの画像検査の発達から、巨細胞性動脈炎と診断される方が増えてきている病気です。
巨細胞性動脈炎の病態は、大型〜中型動脈に免疫細胞の異常により炎症が起こる血管炎です。典型的には、外頚動脈(首の動脈)から分枝した『側頭動脈』に炎症が起きるため、側頭動脈炎と昔からいわれていました。
症状は何がありますか?
典型的な、側頭動脈に炎症を認めた場合は、「頭痛や側頭動脈の圧痛・腫脹」を認めます。
それに波及して、顎跛行や下顎痛を認めることもあります。顎跛行とは食べ物を噛んだり、しゃべったり、とにかく顎の筋肉を動かすと痛くなるという症状のことです。
また、血管炎自体の全身症状として、「発熱、全身倦怠感(だるさ)、体重減少、疲れやすさなど」を認めます。
眼動脈に炎症を認めた場合は、急激で重篤な視力低下を認める場合があり、注意が必要です。最悪失明してしまうこともあり、見つけたら緊急に治療を行います。30%の割合で前駆症状の一過性に真っ暗になる黒内症発作を認めます。
また、炎症が大動脈に起きる場合もあり、その場合、上肢虚血症状や下肢虚血症状を認める場合もあります。
検査は何がありますか?
一般的な、血液検査、尿検査、胸部レントゲンの他に、造影CT(難しければ単純CT)、血管エコー、MRI/MRA検査、眼底検査、PET-CT検査や必要によって側頭動脈生検などを行います。
血管エコーは、被爆の心配もなく非侵襲的であるため、疑う場合は行います。側頭動脈周囲の「マカロニサイン(haloサインともいう)」という血管の浮腫性変化があるかを見ます。
血管壁が炎症により肥厚したマカロニサイン
MRI / MRA検査は、非侵襲的で被爆の心配はなく、頭蓋領域および頭蓋領域外の大型〜中型動脈の評価ができます。MRA検査とは、MRI検査の血管のみを抽出した画像の検査です。通常「ガドリウム造影剤」を使用して撮像します。ガドリウム造影剤は、一般的なCT検査のヨード造影剤と違い副作用は少ないとされているのが特徴です。
また最近では、PET-CT検査を行い、より血管炎の局在などがはっきりわかるようになりました。2018年4月より、大型血管炎(巨細胞性動脈炎または高安動脈炎)の診断がついている方は、PET-CTの保険適用も認められるようになり、PET検査がより受けられやすくなりました。
※高安動脈炎または巨細胞性動脈炎の診断がついていない場合は、保険適応外になりますのでご注意ください。
PET-CT。炎症がある所は緑〜赤色に光る(画像は高安動脈炎のもの)
側頭動脈の生検は、侵襲的であり、最近はPET-CT検査など画像技術が発展しており、行う頻度は減っています。
・血液検査では何に注目したらいいですか?
血液検査では、「CRP、ESR(赤血球沈降速度)、WBC(白血球)」で炎症の評価をします。また、「Hb(ヘモグロビン)」にて、慢性炎症による貧血の評価ができます(ただし、鉄欠乏性貧血などその他の原因で貧血となっている場合があるので注意してください)。
また、巨細胞性動脈炎には、特徴的な抗体はありません。症状、血液検査や画像所見など総合的判断し診断されます。
合併症はありますか?
巨細胞性動脈炎に特徴的な合併症として、約30%の方に『リウマチ性多発筋痛症』が合併するといわれています。
リウマチ性多発筋痛症とは、こちらも50歳以上の方に認め、急に身体の関節が腫れて強い炎症と痛みを起こす病気です。関節の中でも、肩や膝などの近位関節に起きやすいのが特徴です。リウマチのように関節に炎症を起こす疾患であることから、「リウマチ性多発筋痛症」と呼ばれています。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。参考になりましたら、高評価、コメントを頂けましたら嬉しいです?またTwitterのフォローもお願いします?
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※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。