リウマチや膠原病の患者さんでは、切っても切り離せない『ステロイド』。一度は使われたことがある、今も使っているという患者さんは多いかと思います。そこで、今回はステロイドの注意すべき副作用『TOP10』を取り上げていきたいと思います!
なぜ、ステロイドを使わなければいけないの?
ステロイドは、リウマチ・膠原病科医にとっては永遠のテーマです。
なぜなら、ここまで発達した医学においても、やはりまだステロイドというのは、リウマチ・膠原病治療の治療薬のエースであるからです。
なぜ、ステロイドは膠原病治療薬のエースなのでしょう?
それは、一言でいって、その高い、圧倒的な免疫抑制力にあります。
言わば、免疫抑制剤の中の【帝王】なのです!
例えば、全身性エリテマトーデスの初期治療には、ステロイドパルスや中等量や高用量のステロイドが使われます。関節リウマチの患者さんでも、発症時の関節炎が燃え盛っている時の、一時的な抗炎症作用を期待するために、少量のステロイドを併用する事があります。
どんなに、医学が発展しても、未だステロイド以上の免疫抑制効果のある薬剤はまだ開発されていないのです。現に、新型コロナ肺炎の治療薬として、その炎症(肺炎)を抑えるために、デカドロン®︎(デキサメタゾン)というステロイドが使われています。
このように、今の医学においても、一時的に高い抗炎症作用を期待するには、ステロイドの力を借りなくてはいけないのが、現状なのです。
長々と書いてしまいましたが、リウマチ・膠原病科医にとっては、ステロイドは患者さんの高い炎症、自己免疫に戦うために、頼もしい・強力な武器であることは確かです。
ただ、今回取り上げますようにステロイドは、その強力な免疫抑制作用だけでなく、副作用という形で身体に大きな負担をかけてしまうのも事実です。
言わば『諸刃の剣』ですが、これをうまく使ってこそ、患者さんの症状を改善して、病気を良くし、生活の質を改善してくれます。
では、具体的に注意すべき副作用『TOP 10』をみていきましょう!
10位 『ステロイドざ瘡(ニキビ)』
ステロイドが顔や身体の皮脂腺を活発化させ、ニキビができる場合があります。ひどい時は外用薬などで対応すること多いです。
9位 『血栓症』
ステロイドが原因で、血が固まりやすくなってしまう場合があります。通常、サラサラの薬(抗凝固薬)を飲んだりはしないですが、定期的に歩いたり、長時間座らないなどの予防が大切です。
8位 『白内障・緑内障』
ステロイドを長期に使用すると、白内障や緑内障の原因となってしまう場合があります。高齢者の方は、年齢的に白内障が進んでくる場合がありますが、ステロイド内服後に急激に目が見辛くなったなど、異変に気づいた時は、早めにかかりつけ医や眼科に相談してください。
7位 『高脂血症』
ステロイドが原因で、コレステロール値が上昇する場合があります。特にLDLコレステロールという通称、「悪玉コレステロール」が高い場合は、スタチンという高脂血症の薬を内服してもらう場合があります。
ただし、若い方の場合や、高血圧や糖尿病の合併がない場合は、LDLコレステロール高値のみでは、血管疾患リスク(心筋梗塞や脳梗塞など)が高くないため、必ずしも、スタチン系抗コレステロール薬を飲む必要はありません。
抗コレステロール薬を飲む必要があるか、主治医としっかりご相談ください。
6位 『不眠』
ステロイドは、ストレスホルモンと呼ばれ、身体を元気にしたい時に出るホルモンです。
なので、朝起きてから午前中にかけての分泌が最も多く、これによって、起床後の重たい体を起こし、1日を精力的に過ごすことができるようになります。
夜にステロイドホルモンが多いとどうしても、体が興奮してしまい、眠りが浅くなってしますのです。
この対策のため、朝>昼>夕とステロイドの量を減らしながら内服するのが通常です。
それでも、難しい場合は、一時的に睡眠薬を使うのも良いかと思います。
5位 『ムーンフェイス』
膠原病の患者さんは、若年〜中年の女性で発症する方が多く、ステロイドを高用量で長期に使用する際に、どうしても顔の浮腫が強くなります。
これを「ムーンフェイス」と言いますが、やはり顔の浮腫は若い女性にとっては、気にしてしまう部分です。
特効薬はないのですが、減量していきながら、ムーンフェイスも少しずつよくなっていきますよと言いますが、内心はなんとか改善できたらと思っていますが、難しいことが多いです。。。
4位 『大腿骨頭壊死』
詳しい原因はまだ不明な点も多いのですが、股関節にある、大腿骨の頭の骨頭の部分が壊死(腐る)してしまうことがあります。
股関節痛が出現していない段階から、実は進行していたという場合もあり、股関節痛を認めた場合は、すぐにかかりつけ医にご相談することをお勧めします。
症状が強い場合は、整形外科的な手術が必要な場合もあります。
3位 『ステロイド糖尿病』
ステロイドは、ストレスホルモンとご説明しましたが、身体が頑張ろうとするときにどうしても血糖値が上がります。その影響が長く続くと、ステロイド糖尿病となってします場合があります。
元々、血糖値が高めの方や糖尿病持ちの方は、特に注意が必要です。
定期外来で、『血糖値』と『HbA1cという糖尿病のマーカー』をチェックしてもらってください。
空腹時血糖≧ 126 mg/dl + HbA1cが6.5以上の場合は、糖尿病の基準を満たしてしまいます。
空腹時血糖とは、通院時の朝食を取らないでとった際の血糖値のことです。
HbA1cとは、1 ~ 2ヶ月の平均血糖値を反映するマーカーで、1 ~ 2ヶ月の血糖値が高いと上昇します。
まずは、運動・食事(療法)を気を付けることをお願いしますが、それでも改善乏しければ、血糖降下薬という糖尿病のお薬を処方する場合もあります。
2位 『骨粗鬆症』
ステロイドは、骨やカルシウムの吸収などに影響し、骨を脆くしてしてしまう場合があります。
圧迫骨折や大腿骨骨折などは患者さんの生活の質を極端に下げてしまうので、特に注意して診療していきます。
ビスホスホネート製剤やビタミンDの内服薬を飲んだりして予防していきます。
また、プラリア®︎などの注射薬をする場合もあります。
ビタミンDは、日光を浴びることで体内で生成されます。
そのため、紫外線を浴びるのはいやだからと、手足も日光を遮断してしまうと、身体の中で上手くビタミンDが生成されません。
自分でもできることとして、顔の日焼け止めは仕方ないまでも、手足に少しでも日光を浴びる習慣を意識的につけていくことは、とても大切なことかと思います。
また、最近はビタミンDは、身体の免疫力を高めることもわかってきており、感染症予防にも効果があるので、「日光浴」の効果は今後注目されてくるのではないかと思っています。
女性の顔の日焼け止めは、美容のために大切なことなので、それ以外の部分を意識するといいかもしれません。
1位 『感染症・易感染性』
やはり、1位は感染症・易感染性です。ステロイドに限らず、全ての免疫抑制剤に言えることですが、その免疫抑制作用によって、逆に身体の免疫力が低下してしまい、感染症を引き起こしてしまいます。
2019年、肺炎は日本人の死因の第5位でした。
高齢者においては、肺炎は致命傷となることもあります。
特に、ニューモシスチス肺炎は重症になる可能性が高いため、ST合剤という予防の抗生剤を飲んでいる方も多いかと思います。
ダイフェン®︎やバクタ®︎というお薬です。
女性の顔の日焼け止めは、美容のために大切なことなので、それ以外の部分を意識するといいかもしれません。
ニューモシスチス肺炎は、ダイフェンやバクタを飲むことで、ほぼ予防することができるので、処方されていたら続けて飲むことが大切かと思います。
また、その他の予防としては、口内環境が悪い方は肺炎になりやすいです。
口内に雑菌が多い場合、口腔内の常在菌が肺炎の原因となります。
なので、歯磨きを毎回行い、口内環境を清潔に保つことは非常に有用です。
また、口内環境をよくすることは、糖尿病等の病気の予防になると言われております。
口腔内は、あらゆる病気の根源なのです。
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