強皮症

強皮症におけるオフェブ®︎(ニンテダニブ)の有効性について【SSc】

こんにちは、今回は「強皮症におけるオフェブ®︎(ニンテダニブ)の有効性」について取り上げていきたいと思います。

私もオフェブ®︎を使っていますが、下痢があるので、止痢薬を使用していて、オフェブについても詳しく知りたいです。

〈 用語解説 〉

  • HRCT:高分解能CT(普通のCTより画像が鮮明なCT)
  • FVC:努力性肺活量
  • DLco:ガス拡散能力のことで、 肺からどれだけ効率よく体の中に酸素が取り込まれるかの指標です。
  • SSc:全身性強皮症

強皮症におけるオフェブ®︎(ニンテダニブ)の有効性

今回は、ニンテダニブ(オフェブ®︎)の有効性を検証した、SENSCIS試験1)を見ていきます。

SENSCIS試験1)の結果は、2019年6月に臨床系の有名誌 『 New England Journal of Medicine 』に掲載されました。

作用機序は?

ニンテダニブ(オフェブ®︎)は『 チロシンキナーゼ阻害薬 』です。

線維芽細胞の増殖、遊走、寿命の延長に関わるPDGFR(血小板由来増殖因子受容体)FGFR(線維芽細胞増殖因子受容体)VEGFR(血管内皮増殖因子受容体)の受容体型チロシンキナーゼを阻害することで、抗線維化作用を発揮します。

方法 Methods

まずは、SENSCIS試験の概要についてです。

試験の概要
  • 試験デザイン:ランダム化、二重盲検、プラセボ対照
  • 地域:日本を含む32カ国、194施設
  • 対象
    1. スクリーニング前7年以内に全申請強皮症を発症
    2. 20歳以上
    3. スクリーニング前12ヶ月以内にHRCTが実施されている
  • 方法:580例をオフェブ®︎群あるいはプラセボ群に1:1の比率でランダムに割り付けし、52週間試験薬を投与した。
  • 主要評価項目:投与52週までのFVC(努力性肺活量)の年間減少率(mL/年)

ベースラインの特徴

ベースラインの特徴を見ていきましょう。

〈 ベースラインの特徴 Pick up 〉

  • びまん性皮膚硬化型(51.9%)、限局皮膚硬化型(48.1%)はおよそ半数ずつでした。
  • 平均年齢は、54.0 ± 12.2歳(SD)でした。
  • 平均%FVCと%DLcoはそれぞれ72.5±16.7%と53.0±15.1%でした。
  • ほぼ半数(48.4%)がベースライン時にミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®︎)を使用していました。




結果 Results

それでは、結果を見ていきましょう。

オフェブ®︎は呼吸機能の低下を抑制しましたか?【主要評価項目】

オフェブ®︎は、呼吸機能の低下を抑制させたのでしょうか。

オフェブ®︎(ニンテダニブ)は、プラセボに対し、52週間のFVC(努力性肺活量)のベースラインからの年間減少率が有意に低い結果でした(図A〜C)

つまり、呼吸機能の低下を有意に抑制しました

〈 図A:投与52週までのFVC(努力性肺活量)の年間減少率 〉

〈 図C:52週間のFVC(努力性肺活量)のベースラインからの平均変化量の推移 〉

〈 図B:52週間のFVCの調整後年間低下率の箱ひげ図 〉

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皮膚硬化の改善はありましたか?

皮膚スコアである、 mRSSは、オフェブ®︎(ニンテダニブ)群プラセボ群有意差はありませんでした

mRSS:強皮症で用いられる皮膚硬化スコア)

オフェブ®︎
(ニンテダニブ)
プラセボ
mRSSのベースラインからの絶対的変化量-2.17 ± 0.27−1.96 ± 0.26
差(95%CI)-0.21(-0.94 – 0.53)

皮膚硬化には、効果は示されなかったのですね。

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その他の副次的評価項目

次に、それぞれの副次評価項目についても見ていきたいと思います。

オフェブ®︎
(ニンテダニブ)群
プラセボ群差(95%CI)
第52週におけるFVC(努力性肺活量)のベースラインからの絶対的変化量(ml)-54.6 ± 13.9−101.0 ± 13.646.4(8.1 – 84.7)
FVCの年間減少率 – 予測値に対する割合-1.4 ± 0.4-2.6 ± 0.41.2(0.1 – 2.2)
第52週におけるDLCOのベースラインからの絶対変化率 – 予測値に対する割合-3.21 ± -.54-2.77 ± 0.54-0.44(-1.94 – 1.06)
52週目におけるFVCのベースラインからの絶対的減少が予測値の5%ポイント以上であった患者59 / 287
(20.6%)
82 / 288
(28.5%)
0.65(0.44 – 0.96)
52週目におけるFVCのベースラインからの絶対的減少が予測値の10%ポイント以上であった20 / 287
(7.0%)
24 / 288
(8.3%)
0.82(0.44 – 1.52)
52週目のFVC(mL)のベースラインからの相対的低下が5%以上の患者95 / 287
(33.1%)
125 / 288
(43.4%)
0.65(0.46 – 0.91)
第52週において、ベースラインからのFVC(mL)の相対的減少が10%以上であった患者48 /287
(16.7%)
52 / 287
(18.1%)
0.91(0.59 – 1.41)




安全性はどうでしたか?

  • 何らかの有害事象や重篤な重篤な有害事象を発症した患者さんの割合は、オフェブ®︎(ニンテダニブ)群とプラセボ群で大きな差はありませんでした。
  • オフェブ®︎(ニンテダニブ)群の方が、高い割合で有害事象によって治療を中止しました。

オフェブ®︎(ニンテダニブ)で注意すべき副作用

  • 下痢
  • 悪心
  • 嘔吐
  • 腹痛
  • 体重減少
  • 疲労
  • AST / ALT 増加

体重減少や疲労は、下痢、悪心、嘔吐といった症状から相対的に起こる要素も大きいと思われます。

下痢については、感染性ではないため、止痢薬を使用しながら対応することができます

ただし、あまりにも症状が強い場合は、中止を検討します。

発熱や寒気を伴う下痢については、細菌やウイルスによる感染症の可能性があるため、そういった場合は、かかりつけ医にご相談ください。

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今回のまとめ

今回のまとめ
  • オフェブ®︎(ニンテダニブ)は、プラセボと比較し、投与52週までのFVC(努力性肺活量)の年間減少率を有意に低下させ、呼吸機能低下を抑制しました。
  • ただし、オフェブ®︎は、現在の呼吸機能を改善させる作用があるわけではなく、進行を抑えるためのお薬である
  • オフェブ®︎(ニンテダニブ)は、免疫抑制薬ではないため、感染リスクを上げずに治療を行うことができる
  • 副作用には、下痢、悪心、嘔吐、腹痛、体重減少、疲労などに注意する必要がある。
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