こんにちは、今回は『 サイバインコ®︎(アブロシチニブ)の特徴 』について取り上げていきたいと思います!
サイバインコは、名前が独特ですね!よろしくお願いします!
サイバインコ®︎(アブロシチニブ)の特徴について
サイバインコ®︎(アブロシチニブ)は、2021年12月13日に発売されたJAK阻害薬です。
サイバインコ®︎は、アトピー性皮膚炎に適応のある、特にJAK1選択性の高いJAK阻害薬です。
適応疾患は?
サイバインコ®︎の適応疾患は、以下のようになります。
- アトピー性皮膚炎
どんな時に適応となりますか?
- 既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎に良い適応となります。
用法は?
サイバインコ®︎(アブロシチニブ)には、50㎎・100mg・200mgの3つの剤形があります。
用法用量 | 成人及び12歳以上の小児に、アブロシチニブ 100mg を 1日1回経口投与します。 |
最大 | 患者さんの状態に応じて 200mg を1日1回投与することができます。 |
薬価は、以下のようになります。
〈 薬価の目安 〉 | 1錠 | 1ヶ月(30日)の目安 |
50 mg | 2587円 | |
100 mg | 5044円 | 45,400円(3割) 30,300円(2割) 15,100円(1割) |
200 mg | 7566円 | 68,100円(3割) 45,400円(2割) 22,700円(1割) |
3割負担で、1月あたり45,400円は、決して安い金額ではないですね。
副作用は?
1%以上 | 悪心(11%) 腹痛、嘔吐、下痢 疲労 上咽頭炎、上気道感染、毛包炎 頭痛(4.4%) 浮動性めまい ニキビ(尋常性ざ瘡)(3.6%) CK(CPK)上昇 |
1 %未満 | 消化不良、腹部不快感 発熱 尿路感染、インフルエンザ、咽頭炎、気管支炎などの感染症 白血球減少、赤血球減少、白血球増加 体重増加、高脂血症 脱毛症、蕁麻疹、掻痒症 NK細胞減少、LDH増加、尿中タンパク陽性など |
重大な副作用
- 感染症・・・単純ヘルペス(3.2%)、帯状疱疹(1.6%)、肺炎(0.2%)など
- 重篤な感染症、敗血症、日和見感染症が起きた場合は、感染のコントロールが得られるまでは、本剤を休薬します。
- 静脈血栓症・・・肺塞栓症(0.1%未満)、深部静脈血栓症(0.1%未満)
- 血球減少・・・白血球減少(1.4%)、ヘモグロビン減少(0.9%)、貧血(0.6%)、リンパ球減少(0.7%)、好中球減少(0.4%)
- 間質性肺炎・・・0.1%
- 肝機能異常・・・AST上昇(0.8%)、ALT上昇(0.6%)
- 消化管穿孔・・・頻度不明
サイバインコ®︎(アブロシチニブ)のエビデンス
サイバインコ®︎の有効性【JADE COMPARE 試験】
アブロシチニブ(サイバインコ®︎)は、JADE MONO-1試験など多くの報告がありますが、今回はJADE COMPARE試験を紹介したいと思います。
こちらは、アブロシチニブと、すでにアトピー性皮膚炎にて使用されているデュピクセント®︎(デュピクセント)とプラセボをコントロールに用いて、有効性を比較した臨床試験です。
- 試験デザイン:二重盲検ランダム化プラセボ対照試験、ダブルダミー、第Ⅲ相試験
- 対象:外用剤で効果不十分な中等度から重度の成人のアトピー性皮膚炎患者 838例
- 中等度〜重度とは? ➡︎ IGAスコア(医師による皮膚病変の全般的な評価) ≧ 3、EASIスコア(活動性の評価スケール) ≧ 16、アトピー性皮膚炎の体表面積に対する割合 ≧10%、 PP-NRS(ピーク掻痒数値評価尺度) ≧ 4
- 日本人患者 76例も含まれている
- 投与群の割り付け
- ❶ アブロシチニブ(サイバインコ®︎)200 mgの1日1回 と デュピルマブ(デュピクセント®︎)に対応するプラセボを投与する群
- ❷ アブロシチニブ(サイバインコ®︎)100 mgの1日1回 と デュピルマブ(デュピクセント®︎)に対応するプラセボを投与する群、
- ❸ デュピルマブ(デュピクセント®︎)300mg とアブロシチニブ(サイバインコ®︎)に対応するプラセボを投与する群
- ❹ サイバインコに対応するプラセボとデュピルマブに対応するを投与する群
- それぞれを、2:2:2:1の比で無作為に割り付け、各々を16週間投与した。
12週時のIGAスコア(医師による皮膚病変の全般的な評価)改善
アブロシチニブ(サイバインコ®︎) 100 mg群 、200 mg 群 いずれも、プラセボ群と比べて、12週時のIGAスコアの有意な改善を認めました。
また、データには示しませんが、この結果(IGAスコアの改善)は、16週時時点でも維持されていました。
12週時 | アブロシチニブ 200mg N = 226 | アブロシチニブ 100mg N = 238 | デュピルマブ 300mg N = 242 | プラセボ N = 131 |
IGAスコア | 48.4 %(106 / 219) | 36.6 %(86 / 235) | 36.5 %(88 / 241) | 14 %(18 / 129) |
プラセボとの差(95%CI) | 34.8(26.1 – 43.5) | 23.1(14.7 – 31.4) | 22.5(14.2 – 30.9) | |
P < 0.001 | P < 0.001 |
● IGAスコア:医師による皮膚病変の全般的な評価
0 = 消失 | アトピーによる炎症の徴候なし |
1 = ほぼ消失 | かろうじて認識できる紅斑またはごく軽度の病変の隆起(丘疹形成/浸潤) |
2 = 軽症 | 目で検知可能、薄いピンク色の紅斑、及びごく軽度の隆起(丘疹形成/浸潤) |
3 = 中等症 | くすんだ赤色、明らかに認識可能な紅斑、明らかに認識できる隆起(丘疹形成/浸潤)、ただし広範ではない |
4 = 重症 | 深紅/暗赤色の紅斑、著明かつ広範な隆起(丘疹形成/浸潤) |
12週時のEASI-75達成(EASIスコアの75%の改善)
アブロシチニブ(サイバインコ®︎) 100 mg群 、200 mg 群 いずれも、プラセボ群と比べて、12週時のEASI-75を達成した患者の割合は有意に高かった。
また、データには示しませんが、この結果(EASI-75達成)は、16週時時点でも維持されていました。
12週時 | アブロシチニブ 200mg N = 226 | アブロシチニブ 100mg N = 238 | デュピルマブ 300mg N = 242 | プラセボ N = 131 |
EASI-75反応 | 70.3 %(154 / 219) | 58.7 %(138 / 235) | 58.1 %(140 / 241) | 27.1 %(35 / 129) |
プラセボとの差(95%CI) | 43.2(33.7 – 52.7) | 31.9(22.2 – 41.6) | 30.9(21.2 – 40.6) | |
P < 0.001 | P < 0.001 |
※ IGAスコア改善およびEASI-75達成とも、デュピルマブ群のアブロシチニブ各用量群、プラセボ群に対する検証は行なっていません。
● EASI スコア : アトピー性皮膚炎の活動性の評価スケール
医師が測定する湿疹の重症度や範囲をあらわすスコアです。
4つの身体部位(頭頸部、体幹、上肢、下肢)のスコアを合計します。
〈 EASIスコアの75%、90%改善の目安? 〉
2週時のPP-NRS4達成(ピーク時痒み数値評価スケール)
アブロシチニブ(サイバインコ®︎) 100 mg群 、200 mg 群 いずれも、プラセボ群と比べて、2週時のPP-NRS4(ピーク時痒み数値評価スケール)を達成した患者の割合は有意に高かった。
2週という治療開始初期から、アブロシチニブは痒みに対して効果が期待できることがわかります。
また、データには示しませんが、この結果(PP-NRS4)は、16週時時点でも維持されていました。
2週時 | アブロシチニブ 200mg N = 226 | アブロシチニブ 100mg N = 238 | デュピルマブ 300mg N = 242 | プラセボ N = 131 |
PP-NRS4反応 | 49.1 %(111 / 219) | 31.8 %(75 / 236) | 26.4 %(63 / 239) | 13.8 %(18 / 129) |
プラセボとの差(95%CI) | 34.9(26.0 – 43.7) | 17.9(9.5 – 26.3) | 12.5(4.4 – 20.7) | |
P < 0.001 | P < 0.001 |
サイバインコ®︎(アブロシチニブ)の作用機序について
サイバインコは、選択的にJAK(ヤヌスキナーゼ)1を阻害する低分子化合物です。
JAK(通称:ジャック)とは?
JAKは、サイトカインや増殖因子のシグナル伝達経路を制御する細胞内チロシンキナーゼのことです。
炎症性サイトカインは、免疫細胞や血球系細胞のサイトカインレセプターに結合すると、JAK-STAT系が活性化して、その炎症性サイトカインの情報が核内までシグナル伝達されます。
JAK阻害薬は、このJAK-STAT系を阻害することで、炎症性サイトカインの情報が核内まで伝達されるのを防ぐことができます。
〈 JAK-STAT系の模式図2) 〉
JAKは、多くのサイトカインや増殖因子に関係する
JAKは、多くのサイトカインレセプターに関わっています。
とくに、JAK1は、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎などに関係する炎症性サイトカインに関与しています。
下の図を参考にすると、JAK1は、IL-2、4、6、7、9、13、15、21、22、IFN-γ、Type1IFN、Type3IFNなどといったサイトカインレセプターに関与することがわかっています。
〈 JAKに関与する各種サイトカインや増殖因子2) 〉
さらに、この中でも、アトピー性皮膚炎に関わるサイトカインは、以下のものがわかっております。
- IL-4・・・Th(ヘルパーT細胞)2炎症に関与
- IL-13・・・Th2炎症に関与
- IL-31・・・痒みに関与
- IL-22・・・皮膚バリアーに関与
- TSLP(胸腺間質性リンパ球新生因子)・・・Th2炎症と痒みに関与
JAK1を阻害することで、IL-4、13、22などが抑制され、より強力にアトピーの改善が期待できます。
(画像引用:https://e-mr.sanofi.co.jp/products/dupixent/disease_info/expertmtg/mtg05)
- アトピー性皮膚炎に適応がある(2022年6月時点では適応は、アトピー性皮膚炎のみ)。
- サイバインコ®︎(アブロシチニブ)はJAK1選択性が高い。
- JAK阻害薬は、効果発現は1〜2日と早いのが特徴。
- 他にアトピー性皮膚炎で適応のあるJAK阻害薬は、オルミエント®︎(バリシチニブ)、リンヴォック®︎(ウパダシチニブ)がある(2022年6月時点)。
〈参考〉
- 1) Thomas Bieber, et al. N Engl J Med 2021;384:1101-1112.
- 2) Yoshiya Tanaka, et al. 2022;18:133-145.
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
リンク
※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。