こんにちは、今回は『 ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)の特徴 』について取り上げていきたいと思います。
新しいTNF阻害薬が出たのですね。
今まで、エンブレル®︎をずっと使っていたのですが、ナノゾラ®︎の有効性はどうなのでしょうか。
ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)の特徴
今回は、2022年12月1日に発売されたナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)についてご紹介します(製造販売:大正製薬)。
ナノゾラ®︎は、TNFα阻害薬という種類の生物学的製剤ですが、これまであったTNFα阻害薬と違って、ナノボディという低分子抗体製剤であることが大きな特徴です。
ナノボディは、TNFαの作用を強力に阻害したり、血中半減期が長くなるということが特徴と言われています。
それでは、ナノゾラ®︎について詳しくみていきましょう。
適応疾患は?
ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)の適応疾患は以下のようになります。
- 既存治療で効果不十分な関節リウマチ
用法用量は?
ナノゾラ®︎は、『 皮下注射のシリンジ製剤 』です。
用法用量 (成人) | 1回 30 mg を4週間間隔で皮下投与する。 |
薬価は、以下のようになります。
〈 薬価の目安 〉 | 1本 | 1ヶ月の目安 |
30 mg | 112,476円 | 33,700円(3割) 22,500円(2割) 11,200円(1割) |
4週間隔なのは、注射の負担が少なくて済みますね。
副作用は?
5%以上 | 上咽頭炎 |
1 ~ 5% | 注射部位紅斑 気管支炎、結膜炎、帯状疱疹、肺炎、口腔ヘルペス 肝障害(AST増加、ALT増加) コレステロール増加、トリグリセリド増加 白血球数減少など |
1 %未満 | 貧血、白血球減少症、リンパ節炎 頭位性回転性めまい アレルギー性結膜炎、ぶどう膜炎 上腹部痛、下痢、腸炎 注射部位疼痛、倦怠感、注射部位主張 脂肪肝 細菌性膣症、蜂巣炎、胃腸炎、性器カンジダ症、陰部ヘルペス、インフルエンザ、PCP肺炎 脂質異常症、高脂血症 皮膚炎、湿疹、紅斑など |
重大な副作用
- 重篤な感染症
- 蜂巣炎(0.7%)、肺炎(0.3%)
- 結核
- ループス様症候群
- 間質性肺炎(2.4%)
- 脱髄疾患
- 重篤なアレルギー反応
- 重篤な血液障害
禁忌
- 重篤な感染症
- 活動性結核
- 脱髄疾患(多発性硬化症)およびその既往歴のある場合
- うっ血性心不全
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴にある患者
ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)の有効性について
続いて、ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)の有効性のエビデンスについてです。
ナノゾラの有効性を検証するのに、国内第Ⅱ/Ⅲ試験1)が行われました。
これは、被験者をメトトレキサート(MTX)併用下で、ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ) 30mg 群、ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)80 mg群、プラセボ群の3群に振り分けた二重盲検ランダム化比較試験です(医師も患者もナノゾラかプラセボを打っているかどうかわからない)。
主要評価項目として『投与16週後のACR 20%改善率』と『投与24週後のmTSSのベースラインからの変化量』が設定されました。
主要評価項目にあるACR 20 改善率とは?
ACR 20 改善率は、関節リウマチの臨床試験で最もよく用いられる有効性基準です。
腫脹・圧痛関節数が20%以上改善し、さらに複数の項目で20%以上の改善を満たす場合に判定されます。
ACR 50 改善率、ACR 70 改善率も同様で、腫脹・圧痛関節数などがそれぞれ50%、70%以上改善したということになります。
有効性はどうでしたか?
ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ) 30 mg群は、プラセボ群と比べて、16週時のACR 20改善率は、統計的に有意に高い結果でした。
プラセボ群 | ナノゾラ®︎ (オゾラリズマブ) 30 mg群 | |
ACR20改善率 | 37.3 % (28/75) | 79.6 % (121/152) |
群間差:42.1% p < 0.001 |
※ ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)80 mg群と30mg群の有効性は変わらず、用量依存性の効果は認めなかった。
また、ACR50改善率とACR70改善率についても、
ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ) 30 mg群は、プラセボ群と比べて、16週時のACR 50/70 改善率は、統計的に有意に高い結果でした。
プラセボ群 | ナノゾラ®︎ (オゾラリズマブ) 30 mg群 | |
ACR50改善率 | 12.0 % (9/75) | 55.9 % (85/152) |
群間差:43.9% p < 0.001 | ||
ACR70改善率 | 2.7 % (2/75) | 34.2 % (52/152) |
群間差:31.6% p < 0.001 |
また、ナノゾラ®︎の特徴として、投与早期(1週間以内)に症状の改善を認め、効果発現も早いと報告されています。
ACR70改善率とは、最初(ベースライン)と比べて、70%も改善したという意味なのですね。
ナノゾラ®︎を使用した人は、3人に1人は、16週時に70%の改善を認めたということですね。
レントゲンでの骨びらんや関節裂隙に変化ありましたか?
主要評価項目で、X線での骨びらんと関節裂隙を総合的に評価した指標であるmTSSについても評価しております。
mTSS(modified Total Sharp Score)は、RAのX線画像スコアリング法で、下に出てくるErosionスコアとJSNスコアにより算出されます。
結果は、24週時のmTSSの変化量は、プラセボ群とナノゾラ®︎30mg群では差はありませんでした。
ただし、追加解析で、24週時のmTSSのベースラインの変化量ΔmTSS ≦ 0の患者の割合、つまり、レントゲンで関節破壊の進行がみられなかった患者の割合は、プラセボ群 56.0% とナノゾラ®︎30mg群 73.0%で、有意な差が認められました。
つまり、ナノゾラ®︎の方が関節破壊の進行は、有意に抑えられたことになります。
ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)の作用機序について
ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)は、低分子抗体である
ナノゾラ®︎は、通常のIgG抗体と比べておよそ1/4の分子量の低分子抗体です。
分子が小さいから、『ナノボディ®︎』と言われているのですね。
ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)の構造
ナノゾラ®︎には、『 TNFα結合部位 』と、『 血清アルブミン結合部位 』があります。
ナノゾラ®︎の特徴として、血清アルブミンと結合することで、半減期が延長します。
そのため、ナノゾラ®︎は、4週間間隔に投与でき、注射の回数を少なく済ますことができます。
4週間隔の投与だと、シンポニー®︎(ゴリムマブ)と同じになります。
作用機序
ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)は、膜結合型TNFαおよび分泌型TNFαに対する特異的な結合能を有し、
滑膜細胞などにあるTNF受容体の結合を阻害することによって、抗リウマチ作用を発揮します。
〈 ナノゾラ®︎が作用するイメージ図 〉
- ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)は、4週間隔で投与する。
- 第Ⅱ/Ⅲ相試験では、用量依存性の効果は認めなかった。
- ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)は、低分子抗体(38kDa)である。
- 血清アルブミンと結合することで、半減期が延長する。
- ナノゾラ®︎(オゾラリズマブ)は、比較的効果発現が早い。
〈参考〉
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです。Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、よろしくお願いします!
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※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。