こんにちは、今回は「新型コロナウイルスにおけるイベルメクチンの効果はあるのか」について取り上げていきたいと思います。
イベルメクチンは、コロナに対して有効性があるとかないとか色々噂されていましたが、実際どうなのかとても気になります。
新型コロナウイルス感染症におけるイベルメクチンによる早期治療の効果
今回、2022年3月に New England Journal of Medicine において、イベルメクチンの有効性について無作為化二重盲検試験『 TOGETHER試験1) 』の結果が掲載されました。
イベルメクチンについては、有効性がある、いや有効性はないといった情報が、SNSなどで飛び交っていましたが、今回、前向きにイベルメクチンの有効性を評価したRCT(無作為化ランダム試験)が行われ、その結果は非常に信頼性があるものかと思います。
結論
イベルメクチンは、早期に診断された新型コロナウイルス感染症(SARS-CoV-2)による、入院率や長時間の救急外来滞在を改善させませんでした。
このように、医学的に、新型コロナウイルスに対するイベルメクチンの有効性は、実証されませんでした。
また、WHOも、イベルメクチンのコロナ(COVID-19)への使用は推奨していません2)。
色々な、情報が飛び交う昨今ですが、信憑性のある情報を信頼していきたいですね。
では、早速内容を見ていきましょう。
方法 ~ Methods ~
- 試験デザイン:二重盲検無作為化プラセボ対照アダプティブプラットフォーム試験
- 試験地域:ブラジル(ミナスジェライス州)
- 投与方法:イベルメクチンを体重1kgあたり400μg、1日1回 3日間投与。
- 割り付け:
- Covid-19(新型コロナウイルス)の症状が7日以内にあり、疾患進行の危険因子を少なくとも1つ持つ患者を、イベルメクチン群(679人)とプラセボ群(679人)に無作為に割り付けられた(合計1358人)。
- 主要アウトカム:
- 無作為化後28日以内のCovid-19による入院、または無作為化後28日以内の6時間以上観察下に置かれた救急外来受診であった。
- 副次アウトカム:
- 3 日目と 7 日目の SARS-CoV-2 ウイルスクリアランス、入院までの日数、入院期間、 時間以上の救急受診までの日数、臨床的回復までの期間など
結果 ~ Results ~
❶ イベルメクチンは、コロナによる入院と長期滞在を要する救急外来受診を低下させたか?
【 Primary Outcome:主要評価項目 】
イベルメクチンは、プラセボと比べて、入院、長期滞在(6時間以上)を要する救急外来受診を改善させませんでした。
また、イベルメクチンまたはプラセボを少なくとも1回投与された患者のみを対象とした修正intention-to-treat解析や、指定レジメンへの100%遵守を報告した患者のみを含むper-protocol解析でも、有意差はありませんでした。
Primary-Outcome Event (入院、長期滞在を要する救急外来受診) | 相対リスク(RR) (95%ベイズ信頼区間) | |
〈Intention-to-treat population〉 | ||
イベルメクチン n = 679 | 100 (14.7 %) | 0.9 ( 070 – 1.16 ) |
プラセボ n = 679 | 111 (16.3 %) | → 有意差なし |
〈修正Intention-to-treat population〉 | ||
イベルメクチン n = 674 | 95 (14.1 %) | 0.98 ( 0.69 – 1.15 ) |
プラセボ n = 675 | 107 (15.9 %) | → 有意差なし |
❷ 入院日数や救急外来受診までの日数、死亡や人工呼吸器を使用した人数について差はありましたか?
【 Secondary Outcome:副次的評価項目 】
ウイルスクリアランス、入院日数、6時間以上の救急外来受診までの日数、臨床的回復までの日数、死亡数、無作為化から死亡までの日数、人工呼吸器を使用した人数、人工呼吸器を使用した日数、いずれにおいても、イベルメクチン群とプラセボ群では、有意差はありませんでした。
評価項目 | イベルメクチン (n = 679) | プラセボ (n = 679) | 推定治療効果 (95% ベイズ信頼区間) |
ウイルスクリアランス(PCRキット) | |||
3日目 | 11 / 148(7.4%) | 17 / 170(10%) | 0.76(0.36 – 1.52) |
7日目 | 36 / 142(25.4%) | 42 / 165(25.5%) | 1.00(0.68 – 1.46) |
入院日数(中央値) | 6(4 – 10) | 6(3 – 11) | 1.00 (0.8 – 1.25) |
6時間以上の救急外来受診までの日数(中央値) | 5(4 – 7) | 5(3 – 8) | 1.15 (0.71 – 1.89) |
臨床的回復までの日数(中央値) | 14(11 – 14) | 14(11- 14) | 1.05 (0.88 – 1.24) |
死亡数 | 21(3.1%) | 24(3.5%) | 0.88 (0.49 – 1.55) |
無作為化から死亡までの日数(中央値) | 14(9 – 19) | 14(8 – 20) | 0.88 (0.47 – 1.67) |
人工呼吸器を使用した人数 | 19(2.8%) | 25(3.7%) | 0.77 (0.43 – 1.36) |
人工呼吸器を使用した日数(中央値) | 6(3 – 16) | 7(2 – 12) | 1.06 (0.63 – 1.75) |
→ いずれも有意差なし |
❸ 安全性はどうでしたか?
- プラセボと比較して、イベルメクチン使用による有害事象への有意な影響は認めらませんでした。
❹ サブグループ解析
以下の項目においてサブグループ解析をされていますが、プラセボと比較してイベルメクチンによる治療効果は認められませんでした。
- 年齢:≦50 vs 50<
- BMI:<30 vs 30≦
- 心疾患:あり vs なし
- 肺疾患:あり vs なし
- 性別:女性 vs 男性
- 喫煙歴:現在も吸っている vs 以前に吸っていた vs 吸ったことはない
- 症状出現からの期間:0-3日 vs 4-7日
➡︎ いずれのサブグループ解析も有意差なし
まとめ
イベルメクチンは、プラセボと比較して、入院や救急外来の長期滞在のリスクを改善させる効果は乏しかった。
また、副次的アウトカムに対するイベルメクチンによる治療の重要な効果も認められなかった。
また、WHO(世界保健機関)も、イベルメクチンについては、非常に低いエビデンスしか存在しないと結論付け、COIVD–19の患者の治療にイベルメクチンを使用しないよう勧告しています2)。
〈参考〉
- 1) Glimar Reis, et al. N Engl J Med 2022;386:1721-31.
- 2) World Health Organization. Therapeutics and COVID-19: living guideline.
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。