こんにちは、今回は「帯状疱疹」を取り上げていきたいと思います。
帯状疱疹は、高齢者では多いって聞くし、免疫抑制薬を飲んでいる私も心配でした。
帯状疱疹について
帯状疱疹は、バリセラゾスターウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス:Varicella Zoster virus)によるウイルス感染症です。
まずは、帯状疱疹において押さえておきたいポイントを押さえていきましょう!
- ヘルペス属に属する、バリセラゾスターウイルスによるウイルス感染症である。
- 神経節に潜伏した水痘帯状疱疹ウイルスが、再活性化することで、水疱を伴った皮疹や神経痛が起きる。
- 80歳までに、3人に1人の方が発症する、頻度が多い感染症である。
- 50歳以上の方で、帯状疱疹を予防するには、帯状疱疹ワクチン(シングリックス®︎)が有効である。
80歳までに日本人の約3人に1人が発症する
帯状疱疹は、80歳までに日本人の約3人に1人が発症する1)と言われ、とても罹患率の高い皮膚疾患です。
好発年齢は、50歳以上の方
帯状疱疹の発症率は、50歳以上で増加します1)。
さらに、60代、70代と年齢に伴って発症率は増加していきます。
帯状疱疹の発症の仕方
帯状疱疹の発症の仕方には、特徴があります。
初感染は、水ぼうそうとして発症する
〈 水ぼうそうの皮疹 〉
(画像引用:https://www.babycome.ne.jp/kidsmedica/id/22006000/)
バリセラゾスターウイルスは、初めて感染する時は、『 水ぼうそう 』として発症します。
一般的に、乳幼児〜学童前半期に好発します。
9歳での抗体保有率は95 %に達します。
厄介なことに、水ぼうそうが治った後も、ウイルスは神経節に潜伏しています。
神経節に潜伏したウイルスが、活性化することで発症する
幼少期に罹った水痘・帯状疱疹ウイルスは、実は、身体の外に排除されるわけではなく、神経節にずっと潜伏しています。
それが、あるきっかけで、水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化することで、帯状疱疹を発症します。
〈 神経節に潜伏する帯状疱疹ウイルスの模式図 〉
(https://medley.life/diseases/54b71d9e6ef4587502f19995/details/knowledge/cause/ より引用)
どういった時に発症しやすいのですか?
帯状疱疹は『 免疫力が低下した時 』に発症する
帯状疱疹の発症は、免疫力が低下した時に発症します。
具体的には、加齢や疲れやストレスが溜まっているときに、神経節に潜伏していた水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化して発症します。
帯状疱疹はどういった皮疹ですか?
先ほど、帯状疱疹ウイルスは、神経節に潜伏しているといいましたが、
そのため、認める皮疹は、
- 神経支配領域(デルマトーム)に一致した皮疹を帯状に認めます。
- 皮疹は、浮腫性紅斑を認め、続いて小丘疹が出現し、それらが集簇して水泡を形成します。
〈 神経支配領域に一致した帯状疱疹 〉
(画像引用:https://www.dermatol.or.jp/qa/qa5/q11.html)
〈 神経支配領域(デルマトーム:dermatome)の模式図 〉
好発部位
よくできやすい部位はありますか?
- 肋間神経領域が最も多い。
- 次に、顔面(三叉神経領域)に発生することが多い。
〈 三叉神経領域に認めた帯状疱疹 〉
(画像引用:https://www.suizenji-hifuka.jp/menu/herupesu.html)
〈 三叉神経の支配領域の模式図 〉
(画像引用:https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/trigeminal_neuralgia/)
どのくらいで、皮疹は改善していきますか?
帯状疱疹の皮疹は、水疱を認めた後、
やがて水疱が破れてびらんとなり、かさぶた(痂皮)を形成し、『 およそ2〜3週間 』で治っていきます。
神経痛について
水痘帯状疱疹ウイルスは、神経節に潜んでおり、再活性化した時に、神経も障害します。
これにより、強い神経痛を認めるのが特徴です。
神経痛は、皮疹に先行し、皮疹を認める数日前から認めることが多いです。
疼痛のピークは、皮疹が出現してから『 7〜10日後 』です。
帯状疱疹は、周りに感染しますか?
帯状疱疹は、他の人にうつることはありますか?
基本的には、帯状疱疹は他人への感染性がある病気ではありません。
ですが、水疱を形成している場合、その液からの接触感染で感染する場合もあります。
これは、水疱の中に多量のウイルスが含まれているためです。
感染するのは、水痘帯状疱疹ウイルスに感染したことのない方です。
これによって、水ぼうそうを発症する場合があります。
汎発性帯状疱疹は空気感染する
まれに、水痘帯状疱疹ウイルスが血流感染し、全身に小水疱を認める『汎発性帯状疱疹』を発症することがあります。
汎発性帯状疱疹は、水ぼうそうと同じで、『 空気感染 』します。
汎発性帯状疱疹を認め場合は、症状が落ち着くまで(全ての水疱が痂皮化するまで)は、隔離して管理することが必要です。
ステロイドや免疫抑制薬、基礎疾患などにより免疫抑制状態にある場合に、発症することが多いです。
● 空気感染とは?
空気感染とは、ウイルスなどの病原体が、飛沫核という5 μm以下の微小な微粒子にのることで、空気の流れで感染することです。
空気感染とは、ウイルスなどの病原体が、飛沫核という5 μm以下の微小な微粒子にのることで、空気の流れで感染することです。
空気感染は、病原体が長時間浮遊し、広範囲に広がってしまうのが特徴です。
一方、咳やクシャいなどは水分を含んでおり、水分と一緒にウイルスなどが飛ぶことを『 飛沫感染 』といいます。
飛沫感染は、5 μm以上の大きさがあり、水分の重みですぐに落下してしまい、感染範囲は、1〜2m程度です。
(画像引用:https://www.yonemorihp.jp/smahapi/genre-medical/info-medical/4082/)
帯状疱疹の予防法はありますか?
まずは、『 免疫力を下げないこと 』が大事!
帯状疱疹の発症は、免疫力を低下させないことがとても大切です。
加齢については、避けられないことですが、疲れやストレスは事前に防ぐことが可能です。
帯状疱疹に限ったことではないですが、
- 疲れが溜まる前にこまめに休憩をとる
- 温かい湯船に浸かり身体を温める
- 食事のバランスを整える
- よく笑う
- 楽観的に考える
といったことは、免疫力を上げるためにも非常に大切な習慣です。
50歳以上で予防に有効なのは、帯状疱疹ワクチンの接種
こればでは、生ワクチンである水痘ワクチン(ビケン®︎)しかありませんでしたが、2020年1月より不活化ワクチンである帯状疱疹ワクチン(シングリックス®︎)が登場しました。
シングリックス®︎ には、
- 50歳以上の方に適応があり、
- 従来の水痘ワクチンよりも、有効性が高く(50歳以上で97.2 %2)、70歳以上でも89.8 %3))、
- 予防効果の持続期間も長い(少なくても9年以上は持続効果あり)
という特徴があります。
ただし、費用が 44000 円ほどかかる(2022年3月時点) のが、多少欠点ではありますが、50歳以上の方は、十分に検討するに値するワクチンです。
また、不活化ワクチンであるため、ステロイドや免疫抑制薬使用中でも安全に接種できます。
● シングリックス®︎の詳細については、こちらをご参考ください ⬆︎
〈参考〉
- 1) Shiraki K, et al. Open Forum Infect Dis 2017;4(1):ofx007.
- 2) Lal H et al. N Engl J Med 2015;372:2087.
- 3) Cunningham AL, et al. N Engl J Med 2016;375:1019.
- 清水 宏 あたらしい皮膚科学 第3版 中山書店
- ヘルペス属に属する、ヘルペスゾスターウイルスによるウイルス感染症である。
- 神経節に潜伏した帯状疱疹ウイルスが、活性化することで、水疱を伴った皮疹や神経痛が起きる。
- 80歳までに、3人に1人の方が発症する、頻度が多い感染症である。
- 50歳以上の方で、帯状疱疹を予防するには、帯状疱疹ワクチン(シングリックス®︎)が有効である。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、よろしくお願いします?
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