こんにちは、今回は帯状疱疹ワクチンのシングリックスついて取り上げていきたいと思います。
帯状疱疹ワクチン、リウマチの母にも勧めたいと思っていました。
詳しく知りたいですっ!
帯状疱疹ワクチン『 シングリックス®︎ 』について
シングリックス®︎は、2020年1月に発売された新しい帯状疱疹のワクチンです。
まずは、これだけは知っておくとよい、帯状疱疹ワクチン『シングリックス®︎』の特徴を簡単にまとめました。
- 不活化ワクチンである。
- そのため、ステロイドや免疫抑制薬を使用中でも安全に摂取が可能である。
- 2回接種が必要。2回目は、1回目の接種から2ヶ月後に接種する。
- 対象は、50歳以上の方。
- 2回分で『 44000円 』の費用がかかる(ワクチンのため保険は不適応)。
- 効果は、少なくとも10年間は持続する。
では、そもそも、帯状疱疹とはどういった皮疹なのでしょうか。
帯状疱疹とは
神経支配に一致する帯状疱疹の皮疹
(https://mainichi.jp/premier/health/articles/20160506/med/00m/010/005000c より引用)
帯状疱疹は、『 水痘・帯状疱疹ウイルス 』が原因で、
年齢が上がるとともに免疫力が低下したり、ストレスや疲れが溜まった時などに、もともと神経に潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化することによって認める、水疱を伴った皮疹のことをいいます。
その後、ピリピリとした神経痛を伴います。この神経痛を、『帯状疱疹後神経痛』と言います。
帯状疱疹後神経痛は治らない?
帯状疱疹後神経痛は、3ヶ月程度で治ることもありますが、長く続くことが多いです。
長い場合は、10年以上持続したり、最悪一生神経痛が持続する場合もあります。
今の医学では、神経障害を薬で治すことは難しく、障害された神経を治すには再生医療などの治療がさらに発展し、身近になっていく必要があります。
なので、下にも書きますが、帯状疱疹に罹らないことが、帯状疱疹後神経痛の最大の予防策となります。
それでは、それぞれの特徴について、詳しく解説していきます。
❶ 不活化ワクチン
シングリックス®︎は、生ワクチンである従来の水痘ワクチン(ビケン®︎)と違い、『不活化ワクチン』になります。
不活化ワクチンは、ウイルスや細菌の病原性(毒性)を完全になくして、免疫を作るのに必要な成分だけを製剤にしたものです。
※ 不活化ワクチンについてはこちらをご参照ください↓
❷ ステロイドや免疫抑制薬使用中でも接種可能
シングリックス®︎は、不活化ワクチンであるため、病原体による毒性は無毒化されています(不活化)。
そのため、ステロイドや免疫抑制薬によって、免疫力が低下している場合でも、安全に接種することが可能です。
特に膠原病や自己免疫疾患の方は、帯状疱疹の発症リスクが上昇することが報告されていますので、積極的な接種が推奨されます。
- 関節リウマチ: 帯状疱疹の発症リスクはハザード比で 1.65〜1.911)。
- SLEでは、5〜16倍上昇2)。
- 肉芽腫性多発血管炎(GPA)、多発筋炎・皮膚筋炎でもリスクが上昇する2)。
❸ 用法:2回接種が必要
シングリックス®︎の用法は、2回接種が必要です。
通常は、1回目の接種から『 2ヶ月後 』に2回目の接種を行います。
2ヶ月を超えた場合でも、6ヶ月後までには2回目の接種を行います。
また、過去に帯状疱疹にかかった方でも接種可能です。
他のワクチンとの接種間隔
他のワクチンとの接種間隔はどうしたら良いですか?
- 不活化ワクチン:接種間隔に制限はありません。
- 定期接種:肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチン、インフルエンザ桿菌b型ワクチンなど
- 任意接種:インフルエンザ、A型肝炎ワクチン、髄膜炎菌ワクチン、破傷風トキソイドなど
- 生ワクチン:接種間隔に制限はありません。
- 定期接種:BCG、MR(麻疹・風疹混合)ワクチン、水痘ワクチン、ロタウイルスワクチン(1価、5価)など
- 任意接種:黄熱、ムンプスウイルス(おたふくかぜ)ワクチンなど
- mRNAワクチン(新型コロナ):mRNAワクチンとそれ以外のワクチンは、片方のワクチンを受けてから2週間後に接種が可能です。(参考:厚労省HP)
❹ 対象は50歳以上 or 発症リスクが高い18歳以上
シングリックス®︎の対象年齢は、
- 50歳以上の成人
- 帯状疱疹のリスクが高いと考えられる18歳以上の人(2023年6月適応拡大)
- 疾病または治療により免疫不全である人、免疫機能が低下した人または免疫機能が低下する可能性がある人
- 上記以外で、医師が本剤の接種を必要と認めた人
- また、ワクチン接種スケジュールを短縮することによりベネフィットが得られる場合には、1回目の接種から2回目の接種まで間隔を1か月まで短縮することができます
なぜ対象が50歳以上なのですか?
それは、帯状疱疹の発症率は50歳以上で増加するためです3)。
その後、60代、70代と年齢に伴って発症率は増加していきます。
❺ 費用は 2回分で 44000円
シングリックス®︎の費用は、少し割高で、1回 22000円、2回分では『 44000円 』かかります。
また、シングリックス®︎は、ワクチンであるため保険が効きません(治療ではなく予防のため)。
決して、安くはないんですね。。。
そんな場合は、市町村の助成金制度を利用できる場合があります!
市町村の助成金制度について
市町村によっては、帯状疱疹ワクチンの助成金を受けることができる場合があります。
市町村ごとによりますが、一回につき5,000円〜10,000円程度の助成金が出ることが多いです。
通常は2回で40,000円程するシングリックス®︎も、半分程度になるので是非助成金のご利用を検討ください!
詳しくはお住まいの市町村のホームページをご確認ください(助成金を行っていない市町村もありますのでご注意ください。)。
❻ 効果は少なくとも10年間4,5)は持続する。
44000円もするってことですが、効果はどれくらい持続するのですか?
報告によると、
シングリックス®︎の効果の持続期間は、少なくとも10年以上は認められると報告されています4,5)。
従来の水痘生ワクチンは、帯状疱疹の予防効果は、3〜11年で予防効果が減弱すると言われているのと比較すると、シングリックス®︎は、はっきりと予防効果がある期間が長いのがわかるかと思います。
ワクチンの効果はどれくらい有効なのですか?
また、シングリックス®︎は、長い有効期間とともに、高い有効性も報告されています。
帯状疱疹予防効果は、
- 50歳以上で97.2 %6)
- 70歳以上の方でも 89.8 %7)
といずれも高い有効性が報告されています。
ちなみに、従来の水痘生ワクチンですと、発症率を 51.3 %減少させると報告されています。
これと比べても、シングリックス®︎の有効性が高いのがわかるかと思います。
私見になってしまいますが
1年でおよそ4000円の投資と思えば、高い出費ではない?
44000円とシングリックス®︎の値段は割高なのですが、約10年は効果が持続するので、
「 1年でおよそ4000円の投資だ 」と思えば、そこまで高い出費ではないかもしれません。
(これは、それぞれの方の価値観によってしまいますが。。。)
1年で4000円の投資で、帯状疱疹の痺れを10年も予防できると思えば安いと思えるのでしたら、是非50歳以上の方は、ワクチンの接種を検討されるのが良いかと思います。
さらに、助成金を受けられる市町村も増えてきていますので、トータルではデメリットよりもメリットの方が大きいかと思います。
帯状疱疹ワクチン(シングリックス®︎)が推奨される理由
特徴はなんとくわかりましたが、打つかどうかはまだ迷っています。
そうですよね。
ここまで、シングリックス®︎の特徴を述べてきましたが、それでも打つかどうかを迷っている方も多いかと思います。
そういった方に、帯状疱疹ワクチン(シングリックス®︎)が推奨される理由を、大きく4つ紹介します。
それは、
- 帯状疱疹後神経痛は長い間残る。
- 罹患率が高い:80歳までに日本人の約3人に1人が発症する1)。
- 不活化ワクチンのため、ステロイドや免疫抑制薬を使用中でも安全に接種できる
- 高い有効性と、予防効果の持続期間が長い。
帯状疱疹後神経痛は長い間残ってしまう。
帯状疱疹後には、ピリピリとした針で刺されるような帯状疱疹後神経痛を認めます。
上でも記載した通り、この帯状疱疹後神経痛の症状を薬で和らげることはできても、今の医学では神経障害を完全に無くすことは難しいです(神経痛が消失する場合もあります)。
そのためには、帯状疱疹に罹らないことが一番重要です。
つまり、帯状疱疹を予防することが、帯状疱疹後神経痛の最大の予防になります。
帯状疱疹は罹患率が高い。
また、帯状疱疹は、80歳までに日本人の約3人に1人が発症する3)と言われ、とても罹患率の高い疾患です。
特に、50歳以上の方に発症することが多いため、50歳以上の方は、ワクチンによって予防することがとても大切なのです。
残りの❸❹については、上でも記載してますので省略いたします。
デメリット
大きなデメリットは、やはり44000円(2回分)という費用の問題でしょう。
副反応は何がありますか?
副反応については、以下のものが報告されています。
10%以上 | 疼痛、発赤、腫脹、 頭痛、筋肉痛、 悪寒、発熱、 胃腸症状(悪心、嘔吐など) |
1〜10%未満 | 掻痒感、倦怠感 |
1%未満 | 発疹、注射部位反応など |
いずれの副反応も3日前後で消失すると言われています8)。
まとめ
水痘ワクチン (ビケン®︎) | シングリックス®︎ | |
種類 | 生ワクチン | 不活化ワクチン |
接種対象者 | 50歳以上 | ・50歳以上 ・帯状疱疹帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の人 |
接種回数 | 1回 | 2回 (2ヶ月後に2回目) 遅くとも6ヶ月後までに接種 |
予防効果 | 50〜60% | 90%以上 |
持続期間 | 5年程度 | 10年以上 |
料金 | およそ8800円* | 1回 およそ22000円* (市町村によっては助成金制度あり) |
メリット | ・1回で接種終了 ・値段が安い | ・予防効果が高い ・持続期間が長い ・免疫抑制薬接種していても接種可能 |
デメリット | ・免疫抑制薬使用中は接種できない ・持続期間が短い | ・痛い ・値段が高い ・2回接種が必要 |
シングリックス®︎のメリット、デメリットを理解して、接種を検討されることが大切かと思います。
〈参考〉
- 1) Smitten AL, et al. Arthritis Rheum 2007;57:1431-1438.
- 2) Westra J,et al. Nat Rev Rheumatol 2015;11:135-145.
- 3) Shiraki K, et al. Open Forum Infect Dis 2017;4(1):ofx007.
- 4) Schwarz TF, et al. Hum Vaccin Immunother 2018;14:1370.
- 5) https://jp.gsk.com/ja-jp/news/press-releases/20221020-new-data-show-shingrix-can-provide-at-least-10-years-of-protection-against-shingles-in-adults-aged-50-years-and-over/
- 6) Lal H et al. N Engl J Med 2015;372:2087.
- 7) Cunningham AL, et al. N Engl J Med 2016;375:1019.
- 8) 乾燥組換え帯状疱疹ワクチンシングリックス®筋注用 主要な臨床試験成績等の概要.2018年5月17日. ワクチン評価に関する小委員会資料. 厚生労働省.
- 不活化ワクチン。
- ステロイドや免疫抑制薬を使用中でも安全に摂取が可能。
- 2回接種が必要。2回目は、2ヶ月後に接種。
- 対象は50歳以上。
- 2回分で『 44000円 』かかる。
- 効果は少なくとも9年間は持続。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、よろしくお願いします?
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