こんにちは、今回は『環境中の新型コロナウイルス感染のリスク』について紹介していきたいと思います。
自分の生活する環境で、どれくらいコロナのリスクがあるのかとても気になっていました。
よろしくお願いしますっ!
環境中のコロナ感染のリスクについて
今回は、2022年1月に「 Clinical Infectious Diseases(IF 9.079:2022/2/26時点) 」にて報告された
『 Severe acute respiratory syndromecoronavirus 2 environmental contamination in hospital rooms is uncommon using viral culture techniques1) 』
をご紹介します。
まず、本研究の結論ですが、
コロナ病棟での環境表面(ベッドレール、ドアノブなど)を介したコロナ感染リスクは極めて低かった。
ということでした。
コロナ患者さんの入院病棟でのドアノブといった環境中を介してのコロナ感染のリスクは低かったのですね。
では、研究内容を詳しく見ていきたいと思います。
方法 Methods
試験デザイン
- 前向き観察研究。
- 観察期間:2020年10月〜2021年6月に実施。
- 米デューク大学のCOVID19専門病棟の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の入院室が対象。
- さらに、試験登録後24時間以内にCOVID-19検査が初めて陽性となった患者を対象としている。
- 病室は全て一人部屋。
環境サンプル
環境サンプルは、試験1日目(検査陽性になってから24時間以内)、3、6、10、14日目に採取されました。
以下の場所(環境)から、検体が採取されました。
- 病室内
- ベッドレール
- 準備エリア
- シンク
- 病室内のパソコン
- 出口のドアノブ
- 室外
- 看護ステーションのパソコン
患者について
2020年10月〜2021年6月の観察期間中に、20名の患者が登録されました。
- 年齢: 中央値 65歳( IQR: 50 – 73 )
- 性別: 女性 12人(60 %)、男性 8人(40 %)
- 入院期間: 中央値 6日
- コロナの症状: 酸素吸入 11人(55 %)、発熱 8人(40 %)、咳嗽 6人(50 %)、息切れ 8人(40 %)、下痢5人 (25 %)
結果 Results
20人の病室から、合計 347の個人検体を採取しました。
試験日別の採取検体数とRT-PCR陽性数
下図からもわかるように、
RT-PCR陽性となったのは、347検体中 19例(5.4 %)と低い値でした。
試験 | 検体数 | RT-PCR陽性 となった数 |
---|---|---|
1日目 | 140 | 6 |
3日目 | 140 | 10 |
6日目 | 48 | 2 |
10日目 | 14 | 1 |
14日目 | 5 | 0 |
合計 | 19 / 347 |
環境別のRT-PCRの陽性率はどうでしたか?
環境別では、新型コロナウイルス検出率が高かったのは、患者に最も近いベッドレールの 9.2 %(9 / 347)でした。
環境 | RT-PCR陽性 |
---|---|
ベッドレール | 9(9.2 %) |
洗面台(病室内) | 4(8 %) |
病室内のパソコン | 4(8 %) |
準備エリア | 1(2 %) |
出口のドアノブ | 1(2 %) |
看護ステーションのパソコン | 0 |
合計 | 19 / 347(5.4 %) |
COVID-19陽性の環境サンプルの場所と日別の割合(∗ 細胞培養試料が陽性)
やはり、患者さんの一番近いところには、検出する可能性は上がるのですね。
細胞培養が陽性となったものはどうでしたか?
RT-PCR陽性となった19検体で、細胞培養が陽性となったのは、
3日目に下痢と発熱を伴う有症状患者の手すりから採られた1検体 (0.3%, 1 / 347)だけした。
このことから、感染早期の有症状の場合は、ウイルスの排出量も多いことが予想されます。
まとめ
まとめになります。
今回、
新型コロナウイルス(COVID-19)入院病棟の環境中から得られた検体における、
RT-PCRの結果は 5.4%(19 / 347)と低く、細胞培養では 0.3 %(1 / 347)の検出率でした。
以上から、環境を介しての新型コロナウイルスの感染リスクは、かなり低いということがわかりました。
本研究以外に、環境中のコロナウイルスに関する報告はありますか?
今回の報告以外に、何か報告はないのでしょうか?
先行研究はいくつか報告がありますが、基本的に本研究と同様の結果であったと報告されています。
- Colaneriらの研究では、環境サンプルの7.7%にCOVID-19を検出した(2,3。
- Chenらの報告では、COVID-19陽性患者の入院病室における噴霧物についても、本研究と同様のRT-PCRの結果(5%が陽性)を示した(4。また、その中でもベッドの手すりが最も汚染されやすかった(5.4 %)。
家庭で応用できることはありますか?
今回は、COVID-19専門病棟での研究でしたが、実際は、ご家庭での環境ではどういった対策が取れるのかということが問題かと思います。
COVID-19の主な感染経路は、呼吸器飛沫に曝露されることです。
なので、COVID-19の感染対策の基本は、マスクやソーシャルディスタンスをとるなどによって飛沫感染を防ぐことです。
ここで、本研究でもあったように、環境中の新型コロナウイルスの感染リスクは高くはありませんでした。
ですが、その中でも環境中で注意が必要なのは、発症早期の有症状の方のすぐ身の周りの環境です。
具体的には、ベッドの手すりや、ベッド周りのもの(よく手に取るコップや携帯など)などです。
症状がある方のすぐ周りの環境に注意することは、感染対策上とても大切ですが、それよりも遠い環境は、過剰に感染対策をする必要性は低いのかと思います。
もちろん、絶対はありませんが、
大事なのは、新型コロナウイルスを正しく恐れるということです。
過度な対策は、精神面の影響などデメリットとなることもあります。
正しい感染対策を理解して、目には見えないコロナウイルスと付き合っていきたいですね。
〈参考〉
- 1) Bobby G Warren, et al. Clin Infect Dis 2022 Jan 12.
- 2) Colaneri M, et al. Clin Microbiol Infect 2020;26:1094.
- 3) Wang J, Feng H, et al. Int J Infect Dis 2020;94:103-6.
- 4) Cheng VC-C, et al. Infect Control Hosp Epidemiol 2020;41:1258-65.
- ベッドの手すりやドアノブなどといった環境中のCOVID-19の感染リスクは低い。
- 過度に環境の除菌や消毒をする必要はないが、有症状の方のすぐ周りの環境は注意が必要。
- COVID-19の感染対策の基本は、マスクやソーシャルディスタンス等による飛沫感染の予防が大切である。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。