こんにちは、今回は『 IgG4関連疾患 』について取り上げていきたいと思います。
IgG4関連疾患は、聞いたことあるのですが、いまいちイメージしにくかったです。
ぜひ、よろしくお願いします!
IgG4関連疾患について
IgG4関連疾患は、自己免疫疾患の一つですが、
簡単にいうと、
唾液腺、膵臓、腎臓、肺といったさまざまな臓器に、繊維性の腫瘍性病変を認める疾患です。
腫瘍と言われると、悪性を想像してしまうのですが、悪性腫瘍ではないのですが?
IgG4関連疾患は悪性腫瘍ではなく、繊維化を特徴とする良性腫瘍です。
IgG4関連疾患の患者数
IgG4関連疾患の患者数は、約 8000〜15000人と推定されており、平均の発症年齢は『 およそ60歳 』と言われています。
IgG4関連疾患は、『 指定難病 』に登録されており、難病申請が通れば、医療費の補助を受けることができます。
IgG4関連疾患のポイント
IgG4関連疾患には、主に以下のような特徴があります。
- 血液中の『IgG4』が上昇する。
- 唾液腺や膵臓などの全身の臓器に軟部腫瘤を認めたり、リンパ節腫大を認める。
- 通常炎症反応の上昇は認めない。(CRP = 0)
- ステロイドの反応性が非常に良好である。
症状は何がありますか?
IgG4関連疾患の特徴として、あらゆる臓器に腫大や腫瘤影を認めますと言いましたが、
それぞれの臓器によって認める症状に違いがあります。
それぞれによる症状をまとめましたので、そちらを参考にします。
IgG4関連疾患の対象臓器と症状
臓器 | 主な症状 | 頻度 |
---|---|---|
下垂体 | 頭痛 乳汁分泌 尿崩症など | |
涙腺 (ミクリッツ病) | ドライアイ 眼瞼浮腫など | 50 % |
唾液腺 (ミクリッツ病) | ドライマウス 顎下腺や耳下腺の腫大など | 50 % |
甲状腺 | 頸部の腫脹 全身倦怠感 浮腫 | |
肺・気管・気管支 | 咳 無症状のことも多い | 30 % |
胆道 | 閉塞性黄疸 | |
膵臓 (自己免疫性膵炎) | 閉塞性黄疸 血糖値の上昇(耐糖能異常) 上腹部不快感 | |
腎臓 (IgG4関連腎臓病) | 無症状のことが多い 水腎症 | 20 % |
後腹膜 | 発熱・全身倦怠感 大動脈瘤 | 20 % |
前立腺 | 頻尿 残尿感など | |
リンパ節腫脹 | リンパの張り | |
発熱については、後腹膜に病変を認める場合以外は、基本的に、IgG4関連疾患では発熱を認めないのもポイントです。
IgG4関連疾患は、対象臓器ごとに症状が変わるのですね!
● 呼び方について
IgG4関連涙腺・唾液腺炎を、『 ミクリッツ病 』とも言います。
また、IgG4関連膵炎は、通常『 自己免疫性膵炎 』と言います。
- IgG4関連疾患は、さまざまな臓器に腫大や腫瘤像を認める。
- それぞれの認める臓器によって、症状が変わる。
検査のポイント
IgG4関連疾患の検査で大切なのは、
- 血液検査
- 画像検査
- 組織生検
です。
血液検査
IgG4関連疾患を疑った時に、血液検査で、見るべき項目は、
- IgG4
- IgG
- IgE
- 好酸球
- CRP(炎症反応)
- 補体 C3 / C4
IgG4 基準値:4.8 〜 105 mg/dl (参考SRL)
疾患の名前の通り、血液中のIgG4が上昇することは、IgG4関連疾患の大切な特徴の一つです。
● IgG4とは?
IgG4は、免疫グロブリンの一つであるIgGのサブタイプの一つです。
IgGには、1〜 4までのサブタイプが知られています。
IgG4は、正常の場合は、全IgGの4%未満しか締めません。
IgG4関連疾患は、IgGサブタイプの中でもIgG4の上昇を特徴としており、IgG4 / IgGの比が上昇します。
IgG4関連疾患による自己免疫性膵炎やミクリッツ病(唾液腺や涙腺のIgG4関連疾患)では、IgG4値の上昇の目安として、
『 IgG4 ≧ 135 mg/dL 』
という値があります。
しかし、2019年のACR/EULAR(アメリカリウマチ学会 / 欧州リウマチ学会)の分類基準1)では、血清IgG4濃度は、基準値を参考にしており、それぞれの範囲内で点数化されています。
血清IgG4濃度 | 点数 |
---|---|
基準値上限(105)〜 2倍以内 | 4(軽) |
基準値の2倍以上(210) 〜 5倍以下 | 6(中) |
基準値の5倍以上(525) | 11(高) |
2019年のACR/EULARの分類基準1)におけるIgG4濃度の分類
また、血清IgG4が上昇する他の疾患もあるため、注意が必要です。
以下に、血清IgG4値が上昇する疾患を挙げましたので参考にしてください。
- 関節リウマチ
- 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)
- 多中心性キャッスルマン病
IgG、 IgE、 好酸球
IgG4は、IgGのサブタイプの一つと言いましたが、IgG4が上昇すると、それに伴ってIgG4も上昇を認めます。
また、IgG4関連疾患は、アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、喘息など)を合併することも多くあります。
そのため、アレルギーに関連する免疫グロブリンである『 IgE 』や『 好酸球 』の上昇も認めます。
ただし、好酸球数が『 3000以上ある場合 』は、IgG4関連疾患では稀であり、それ以外の疾患を考えます。
基準値の目安 | |
IgG | 870 〜 1700 mg/dl |
IgE | ≦ 170 IL/ml |
好酸球 | 100 〜 300 /μl 0 〜 5% (分画) |
CRP(炎症反応)
IgG4関連疾患の特徴として、CRPといった炎症反応は上昇しないということがあります。
上昇したとしても、微増なことが多いです。
つまり、
通常は、CRPは上昇しません。
ただし、後腹膜に腫瘤を認める場合などでは、発熱に伴ってCRPも上昇する場合もあります。
補体 C3 / C4
C3 / C4といった補体が低下する場合があります。
特に低下を認めやすいのは、腎臓に病変ある場合です。
画像検査
画像で、特に参考になるのは、
CT検査です。
可能ならば(腎機能が問題ない)、造影CT検査を行うことが大切です。
〈 CTでの特徴的な画像所見 〉
ミクリッツ病(IgG4関連涙腺・唾液腺炎)
両側耳下腺の腫脹を認める(黄矢印)。
(http://nakajima-naika.jp/pdf/20130731.pdf より引用)
- 涙腺の腫脹
- 耳下腺の腫脹
- 顎下線の腫脹
自己免疫性膵炎(IgG4関連膵炎)
膵全体の腫大を認める。これほどの腫大にかかわらず、周囲の脂肪織濃度上昇を認めない(急性膵炎と異なる)。
(https://primary-care.sysmex.co.jp/speed-search/disease/index.cgi?c=disease-2&pk=280 より引用)
- びまん性の膵腫大
- 膵管狭窄像
- 胆管狭窄
IgG4関連腎臓病
両側腎実質の多発性造影不領域を認める。
(https://cdn.jsn.or.jp/jsn_new/iryou/free/kousei/pdf/53_8_IgG4.pdf より引用)
- 造影CTで、腎に多発する造影不領域を認める。
- 大動脈周囲、腰椎前面、腎門部に腫瘤性病変を認める(約20%)
- 尿管を圧迫した場合は、水腎症を認める。
IgG4関連呼吸器病変
CTにて気管支壁の肥厚を認める。
IgG4関連呼吸器疾患により、小葉間隔壁の肥厚とスリガラス影を認める。
(http://s-igaku.umin.jp/DATA/65_02/65_02_02.pdf より引用)
- 気管支壁の肥厚
- 間質性肺炎像
- 器質化肺炎像
組織生検
IgG4関連疾患は、膠原病の中でも比較的診断が難しい疾患の一つです。
そういった場合は、積極的に組織の生検することが推奨されます2)。
IgG4関連疾患の特徴的な病理所見は、
- 著明なリンパ球の浸潤や形質細胞の浸潤。
- IgG4陽性形質細胞の浸潤:
- IgG4 / IgG陽性細胞比 40 %以上かつIgG4陽性形質細胞が10 / HPFを超える。
- 繊維化所見(特に花筵状線維化)あるいは閉塞性静脈炎のいずれかを認める。
が特徴的です。
IgG4関連疾患で認める『 花筵状線維化 』
(https://lab-science.w3.kanazawa-u.ac.jp/member-kasashima.html より引用)
組織生検したものを病理検査することで、悪性疾患や多中心性キャッスルマン病、橋本病などとの鑑別をすることもできます。
診断について
IgG4関連疾患には、
自己免疫性膵炎の臨床診断基準(2018)や、IgG4関連ミクリッツ病診断基準(2008)、IgG4関連腎臓病診断基準といった、各臓器別の診断基準があります。
なのですが、今回は、2019年のACR/EULAR(アメリカリウマチ学会 / 欧州リウマチ学会)の分類基準1)を参考にします。
この分類基準は、IgG4関連疾患で認める全ての臓器をカバーした分類基準となります。
〈 IgG4関連疾患分類基準(ACR / EULAR 2019年) 〉
Step 1: エントリー基準
- 典型的な臓器(膵臓、唾液腺、胆管、眼窩、腎臓、肺、大動脈、後腹膜、甲状腺など)の臨床的もしくは画像上の特徴がある。
- もしくはそれらの同一の臓器の病理像で病院が不明なリンパ形質細胞浸潤を伴う炎症所見がある。
⬇︎
Step 2: 除外基準
臨床症状 | ・発熱 ・ステロイドへの反応性が認められない |
血液検査 | ・説明のつかない白血球減少と血小板減少 ・末梢血の著明な好酸球増多(>3000mm3) ・ANCA陽性(PR3やMPO) ・抗SS-A抗体や抗SS-B抗体陽性 ・抗ds-DNA抗体、抗RNP抗体や抗Sm抗体陽性 ・その他の疾患特異抗体陽性 ・クリオグロブリン血症 |
画像所見 | ・悪性腫瘍や感染を疑う画像所見で十分に精査がなされていない ・急速に画像上の進行がある ・エルドハイム・チェスター病に合併する長管骨の異常 ・脾腫 |
病理所見 | ・悪性疾患を示唆する細胞浸潤があり精査されていないもの ・炎症性筋線維芽細胞性腫瘍に合致するマーカー陽性 ・著明な好中球の浸潤 ・壊死性血管炎 ・著明な壊死 ・一次性の肉芽腫性炎症 ・マクロファージ / 組織球の異常 |
⬇︎
Step 3: 組み入れ基準
点数 | ||
---|---|---|
病理組織 | ・特異所見なし ・密なリンパ球浸潤 ・密なリンパ球浸潤と閉塞性静脈炎 ・密なリンパ球浸潤と花筵状の線維化±閉塞性静脈炎 ・免疫染色 |
0 4 6 13 0 〜 16 |
血清IgG4濃度 | ・基準値内もしくは未測定 ・基準値上限 〜 基準値上限の2倍未満 ・基準値上限の2倍以上 〜 5倍以下 ・基準値上限の5倍を超える |
0 4 6 11 |
両側の涙腺、耳下腺、舌下および顎下腺 | ・どの対も病変なし ・1対の病変 ・2対以上の病変 |
0 6 14 |
胸部 | ・未評価もしくは下記の項目がない ・気管支血管束や小葉間隔壁の肥厚 ・胸腔内における傍椎体の帯状軟部陰影 |
0 4 10 |
膵臓と胆管 | ・未評価もしくは下記の項目がない ・膵臓のびまん性腫大(小葉構造の消失) ・膵臓のびまん性腫大かつ造影効果のない皮膜様辺縁 ・膵臓(上記のいずれか)と胆管病変 |
0 8 11 19 |
腎臓 | ・未評価もしくは下記の項目がない ・低補体 ・腎盂の肥厚 / 軟部陰影 ・両側腎皮質の低吸収域 |
0 6 8 10 |
後腹膜 | ・未評価もしくは下記の項目がない ・腹部大動脈壁のびまん性肥厚 ・腎動脈以遠の大動脈 もしくは腸骨動脈周囲の全周性 もしくは前方側方の軟部組織 |
0 4 8 |
⬇︎
エントリー基準を満たし、除外基準がなく、
合計点数が20点以上でIgG4関連疾患と分類する。
〈参考〉
- 1) Wallace ZS, et al. Ann Rheum Dis 2020;79:77-87.
- 2) Deshande et al. Mod Pathol 2012;25:1181-92.
- 岡崎 和一、川 茂幸 最新IgG4関連疾患 改訂第2版 診断と治療社
- 萩野 昇 ケースでわかるリウマチ・膠原病診療ハンドブック 羊土社
- IgG4関連疾患は、さまざまな臓器に繊維性の腫瘤性病変を認める疾患である。
- 病変臓器によって、認める症状が違う。
- IgG4関連疾患は、通常炎症反応(CRP)の上昇は認めない。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、よろしくお願いします?
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