こんにちは。今回はリウマチ性多発筋痛症の特徴について解説していきたいと思います!
リウマチ性多発筋痛症は、私のおばあちゃんも診断されました。
リウマチとどう違うのでしょうか気になります?
リウマチ性多発筋痛症は、PMR(polymyalgia rheumatica)とも呼ばれています。
この記事でもPMRと表記しています。
リウマチ性多発筋痛症ってどんな病気?
リウマチ性多発筋痛症と聞いて、こう思ったことがあるかもしれません。
リウマチ性多発筋痛症って、リウマチなの?リウマチとどう違うの?
そうですよね。
名前が似ているから、そう思ってしまうのも十分わかります。
確かに、リウマチ性多発筋痛症は、リウマチと症状の出方が似ている部分があるため、この名前がついています。
ですが、リウマチとは違う、リウマチ性多発筋痛症独自の特徴があるので、今回は是非こちらを覚えてください。
〈 リウマチ性多筋痛症の特徴 〉
- 高齢発症(50歳以上)
- 比較的急激な発症
- 肩、膝などの大関節、上腕、大腿などの近位筋に痛みや炎症が起きる。
- 高い炎症反応(CRP)を認める。
- RFや抗CCP抗体が陰性(血清反応陰性)
この病気の原因は何ですか?
リウマチ性多発筋痛症のはっきりした原因はわかっていませんが、遺伝的要因を背景とした免疫の異常による急性炎症と考えられています。
● 巨細胞性動脈炎の合併について
リウマチ性多発筋痛症は、巨細胞性動脈炎という血管炎を合併することがあります。
頻度は、PMRのおよそ20%程度に合併すると言われています。
巨細胞性動脈炎の症状は、頭痛、顎破行(食べ物を噛んだり、しゃべったり、とにかく顎の筋肉を動かすと痛い)、そして発熱や体重減少などです。
これらの症状を認めている場合は、巨細胞性動脈炎の合併の可能性も踏まえて、検査を行うことが大切です。
高齢発症(50歳以上)
リウマチ性多発筋痛症は、
『 50歳上 』の中高年に多く発症するのが特徴の一つです。
ただし、50歳前後の場合は関節リウマチの好発年齢とかぶる部分もあり、診断には注意を要します。
発症が比較的急激
リウマチ性多発筋痛症の特徴として、
症状の発症が比較的急激で、数日から数週間のうちに症状が出現します。
典型的だと『 痛みが出た日にちをはっきり覚えている。 』と患者さんは訴えます。
症状 〜 大関節痛 / 近位筋優位の筋痛 〜
リウマチ性多発筋痛症の症状の特徴として、
肩、膝などの大関節に関節痛や関節炎を認めます。
また、大関節の炎症に波及して上腕、大腿などの近位筋にも痛みや炎症が起きます。
このように筋肉にも痛みを伴うので、『リウマチ性多発筋痛症』という名前がついています。
● PMRと関節リウマチの関節炎の違い
PMRでは、肩や膝などの大関節主体の関節炎を認めるのに対し、関節リウマチでは手指や足趾などの末梢関節の頻度が多い(もちろん、肩や膝にも認めます)。
その他の症状は?
発熱(38度代まで) | 80% |
両側の肩痛 | 70-95% |
首、臀部痛 | 50-70% |
食欲不振 | 60% |
体重減少 | 50% |
全身倦怠感 | 30% |
抑うつ症状 | 30% |
参考元:https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm120/kouza/kyosai.html
検査 〜 高CRP / RFや抗CCP抗体が陰性 〜
CRPが高値
PMRの特徴として、
通常のリウマチよりも、高いCRP(炎症反応)を認める。
関節リウマチは、関節炎が手指や足趾など末梢関節の場合は、CRPの上昇は、「 0 〜 3 mg/dL」程度のことが多いです。
ですが、典型的なPMRの場合は、CRPは『 およそ 10 mg/dL前後 』と高い値を示すことが多いです。
この高い炎症の原因は、肩や膝などの大関節の炎症によるものです。
ただし、リウマチでも、肩や膝などの大関節に滑膜炎を認める場合は、高いCRPを認めることもあります。
RFや抗CCP抗体が陰性(血清反応陰性)
PMRの特徴として、
通常リウマチで陽性となる、RF(リウマチ因子)や抗CCP抗体は陰性となります。
RFや抗CCP抗体がいずれも陰性のことを『血清反応陰性( seronegative )』とも言います。
PMRがリウマチと違うのは、こういった自己抗体が陰性であることも特徴の一つです。
関節エコーに特徴的な所見は?
関節エコーができる施設では、
関節エコーにて、
肩峰下、三角筋下、転子などに『 滑液包炎 』を認めることが特徴的です。
● 滑液包とは?
滑液包とは、肩、膝や肘などの関節周囲にある、関節のクッションの働きをしたり、動きをスムーズにする働きをする嚢(ふくろ)のことです。
〈 肩にある滑液包の模式図 〉
(https://www.kaken.co.jp/mamechishiki/kata/data/c_1.html より引用)
関節エコーにて肩峰下滑液包に液体貯留を認めている。
関節リウマチでは、関節エコーで『滑膜炎』が主体で見られます。
リウマチとPMRの関節エコーでの、見分けるポイントは、滑膜炎主体なのか、滑液包炎の所見もあるのかがポイントとなります。
その他、特徴的な検査はありますか?
PMRでは悪性腫瘍が合併していることが多いと言われており、およそ10〜20%程度1)2)と言われています。
ですので、ある程度の悪性腫瘍の検索は重要です。
具体的には、まずは胸部レントゲン、全身CT、便潜血検査などを行います。
必要によっては、造影CT、胃カメラや大腸カメラを行う場合もあります。
診断
PMRの診断には、ヨーロッパリウマチ学会・米国リウマチ学会によるリウマチ性多発筋痛症の分類基準 (ACR/EULAR 2012)が用いられています。
上に出てきた特徴が、診断基準にも同じように載っていますね!
〈参考〉
- 1) Soshi Okazaki, et al. Tohoku J Exp Med. 2020;251(2):125-133.
- 2) Tohru Michitsuji, et al. Mod Rheumatol. 2019 Nov; 29 (6): 1013-1016.
- リウマチ性多発筋痛症の特徴を知ることが、関節リウマチとの鑑別になる。具体的には ?
- 高齢発症(50歳以上)
- 比較的急激な発症
- 肩、膝などの大関節、上腕、大腿などの近位筋に痛みや炎症が起きる。
- 高い炎症反応(CRP)を認める。
- RFや抗CCP抗体が陰性(血清反応陰性)
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです。 Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、よろしくお願いします!
リンク
※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。