外来をやっていて、最近特に患者さんからのコロナワクチンをどうしたら良いかと、とても良く質問がありますので今回取り上げてみたいと思います。
まず、どの学会でも強くいっていることですが、新型コロナワクチン接種については、強制ではなく、患者さんの自己判断ということになります。
医師は、ワクチン接種について、基本的なことはアドバイスしてくれると思いますが、最終的に打つか打たないかを決めることは患者さん自身の判断となりますので、そこは十分ご留意ください。
日本リウマチ学会はワクチン接種についてどういっているか?
日本リウマチ学会では、まず、ワクチン接種については強制ではなく、個人の自由意思による選択であることは最初に強調したいと述べています。
そこで、新型コロナウイルスワクチン接種については、ステロイドや免疫抑制剤を使用していたとしても、そのメリット、デメリットを考慮し、他の人よりもむしろ優先して接種した方が良いという考えです。
具体的には、日本リウマチ学会は、リウマチ性疾患でステロイドをプレドニゾロン換算で 5 mg/日以上、免疫抑制剤、生物学的製剤、JAK阻害薬のいずれかを使用中の方は、『 ワクチン接種順位の上位に位置付けています 』。
ただし、患者さん個人個人においては、患者さんの意思と、今の疾患活動性などを考慮して、ワクチン接種前後のステロイドや免疫抑制剤の投与については、主治医と相談するのが現実かと思います。
アメリカリウマチ学会はワクチン接種についてどういっているでしょうか?
一方、アメリカリウマチ学会は、免疫抑制剤やステロイドの使用について、具体的に発表しており、こちらも目安として患者さん側からも医師側からもわかりやすいので、今回取り上げていきたいと思います。
まず、新型コロナワクチン接種自体は、リウマチや膠原病のある患者さんは、ステロイドや免疫抑制剤の有無を問わず、『 強く接種を推奨しております1) 』。
これは、欧州リウマチ学会(EULAR)も同様の立場2)です。
つまり、どのリウマチ学会もワクチン接種を推奨しております。
免疫抑制剤の休薬はどうしたら良いですか?
よりワクチンによる抗体獲得の効果が得られやすいように、ACRでは以下のように接種前後の免疫抑制剤の使用を提言されています。
2022 アメリカリウマチ学会(ACR)の推奨(Version 5)
・メトトレキサート(リウマトレックス®︎、メトレート®︎) ・アラバ®︎(レフルノミド) ・イムラン®︎/アザニン®︎(アザチオプリン) ・プログラフ®︎(タクロリムス) ・ネオーラル®︎/サンディミン®︎(シクロスポリン) ・オテズラ®︎(アプレラミスト) ・アザルフィジン(サラゾズルファピリジン) | ワクチン接種後1〜2週間の休薬(疾患活動性が落ち着いていれば) |
JAK阻害薬: ・ゼルヤンツ®︎(トファシチニブ) ・オルミエント®︎(バリシチニブ) ・スマイラフ®︎(ペフィシチニブ) ・リンヴォック®︎(ウパダシチニブ) ・ジセレカ®︎(フィルゴチニブ) | ワクチン接種後1〜2週間の休薬(疾患活動性が落ち着いていれば) |
・オレンシア®︎(アバタセプト)点滴 | 投与予定の1週間前にワクチン接種を行う |
・オレンシア®︎(アバタセプト)皮下注射 | ワクチン接種後1〜2週間の休薬(疾患活動性が落ち着いていれば) |
・TNF阻害薬 ・アクテムラ®︎(トシリズマブ:IL-6阻害薬) ・IL-17阻害薬 ・IL-12/23阻害薬 ・IL-23阻害薬 ・そのほかのサイトカイン阻害薬 | COVIDワクチン投与後にこれらを一時的に中断するかどうかについては、コンセンサスを得られていない。 |
・プラケニル®︎(ヒドロキシクロロキン) ・免疫グロブリン大量静注療法(IVIg) | ワクチン接種はいつでも可能です。 治療薬投与方法の変更も不要です。 |
・リツキサン®︎(リツキシマブ) | 投与予定の2〜4週間前までにワクチン接種を行う |
・エンドキサン®︎(シクロフォスファミド)静注(IVCY) | 可能であればワクチン接種の約1週間後にシクロフォスファミドを投与 |
・セルセプト®︎(ミコフェノール酸モフェチル) | ワクチン接種後1〜2週間の休薬(疾患活動性が落ち着いていれば) |
・ベンリスタ®︎(べリムマブ) | ワクチン接種後1〜2週間の休薬(疾患活動性が落ち着いていれば) |
カロナール®︎(アセトアミノフェン)、ロキソニン®︎、セレコックス®︎、ボルタレン®︎(ジクロフェナク)など | 病勢が安定している場合にはワクチン接種前24時間は中止し、接種後は内服OKです。 |
以上は、あくまでも目安となります。実際には、主治医と患者さんの現在の状況に合わせて相談することになります。
ステロイドについてはどうですか?
ステロイドについては、急に中止すると離脱症状が起きる可能性があるため、mRNAワクチンは継続して使用することが多いと思います。
日本リウマチ学会ワクチン調査検討委員会の報告では、
プレドニゾロン(プレドニン®︎) 10mg以下では、抗体価の上昇にはほとんど影響はないと報告されており、
プレドニゾロン(プレドニン®︎) 10mg以下であることは、安心して接種できる目安となるかと思います。
新型コロナワクチン Q & A
新型コロナワクチン投与のメリットは?
新型コロナウイルス感染症の発症および重症化の予防が期待できます。
mRNAワクチンは、ステロイドや免疫抑制薬を使用中でも投与可能ですか?
mRNAワクチンは、弱いながら病原性のある弱毒生ワクチンではないため、全ての方で接種可能です。
〈参考〉
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