こんにちは。今回は自己炎症性疾患の一つである成人Still病について取り上げていきたいと思います!成人Still病は、簡略的にAOSD (Adult Onset Still Dease、成人発症Still病)と言われることもあります。
それでは、早速やっていきましょう!
成人Still病ってどんな病気?
成人Still病は、自己炎症性疾患の一つと言われます。
よく言われる膠原病は、白血球のうち主にリンパ球による「獲得免疫系の異常」によって起こります。
獲得免疫系の異常により、リンパ球が自己抗体を産生したり、直接身体を攻撃したりします。
一方、自己炎症性疾患は、白血球のうち好中球やマクロファージなどの「自然免疫系」が主役となった炎症のことを言います。
自然免疫系は、外来からの細菌やウイルスなどの病原微生物が侵入した際に、最初に活躍する免疫システムです。
ここでは、好中球やマクロファージなどが活躍します。
その後、獲得免疫系が登場します。
リンパ球が外来生物に対して、特異的に攻撃したり、特異抗体を作り攻撃します。
こういったように、身体の免疫系は働いています。
自己炎症性疾患は、特に自然免疫系が異常な炎症を起こした病気のことを指します。
成人Still病は、その中でも特に『マクロファージ』が主役となった病気です。
マクロファージなどの自然免疫系が活性化することで、発熱、関節痛、皮疹、筋痛といった症状を認める病気です。
ただし、病気の明らかな原因はわかっていません。
症状について
成人Still病で、多い症状は『発熱、関節痛、皮疹、咽頭痛、リンパ節腫脹、筋痛、体重減少』です。
特に、発熱、関節痛、皮疹はほぼ必発の症状です。
発熱
発熱の特徴は、夕方から夜間にかけて上昇し、朝には自然解熱することが多いと言われています。
38~39℃を超える高熱の割に、感染症と比較して元気な印象を持つことも特徴的です。
関節症状
関節痛は、「中・大関節」に好発します。
中・大関節とは肩関節、肘関節、股関節、膝関節、足関節(くるぶし)を指します。
関節炎が持続すると、リウマチと同様の関節破壊をみることがあり、関節痛は放置しないことが大切です。
皮疹
皮疹は、「サーモンピンク疹」という特徴的な皮疹を認めます。
典型的には発熱時に出現し、解熱時に消退します。
頸部、前胸部や四肢が好発部位と言われています。
Still病で認めるサーモンピンク疹
症状 | 頻度 |
発熱 | 100% |
関節症状 | 100% |
皮疹 | 90-95% |
体重減少 | 50-60% |
咽頭痛 | 70% |
リンパ節腫脹 | 70% |
脾腫 | 65% |
肝腫大 | 50% |
胸膜炎/心膜炎 | 10% |
筋痛 | 55% |
薬物過敏症 | 50% |
血球貪食症候群(マクロファージ活性化症候群)について
成人Still病が悪化し、マクロファージが過剰に活性化すると、血球貪食症候群といった重篤な状態になることがあります。
血球貪食症候群は、発熱、体重減少などの全身症状に加え、白血球、赤血球や血小板が低下します。
長くなってしまうので、血球貪食症候群については別の記事で詳しく説明したいと思います。
検査について
成人Still病で行う検査は、血液検査、胸部レントゲン、CT検査が大切です。
血液検査
血液検査では重要なものは、「炎症、慢性炎症による貧血、肝障害」、
そしてなんといっても「フェリチン」です。
炎症は、「WBC(白血球)、CRP、ESR 1hr」に注目します。
ESR 1hrは赤沈1時間値のことです。
成人Still病は、炎症性疾患であり、炎症による貧血を伴います(慢性炎症による貧血)。貧血は、「Hb (ヘモグロビン)」に注目します。
また、成人Still病は肝障害も認めます。肝障害は「AST / ALT」に注目します。
フェリチンは、成人Still病の「疾患活動性」を反映します。
決められた基準はないですが、1000を超えるとまだ病態がくすぶっている可能性があり、注意が必要です。
治療ではフェリチン は少なくとも1000以下にし、出来るだけ「陰性」を目指すことが大切です。
また、発症時は、フェリチンは数万まで上昇することもあります。
異常値 | |
WBC(白血球) | > 9000 /μL |
CRP | > 0.3 mg/dL |
ESR 1hr(赤沈1時間速度) | > 15 mm |
Hb (貧血) | 男性 < 13 g/dL、女性 < 12 g/dL |
AST / ALT(肝障害) | > 30 / 42 IU/L |
フェリチン | 男性 >250 ng/mL、女性 > 120 ng/mL |
画像検査
成人Still病は、肺や腎臓に異常を認めることは稀ですが、肝臓や脾臓が腫れて腫大してくることが特徴です。このことを「肝腫大、脾腫」と言います。約半数の方に、肝腫大や脾腫を認めます。
また、診断の所でもお話しするように、悪性疾患の除外が大切であるため、胸部レントゲンやCT検査で悪性疾患がないかを検索します。
CT検査は腎機能に問題がなければ、より病変を見やすくするために造影剤を使って行うことが推奨されます。
また同じように悪性疾患の検索のために、上部消化管内視鏡や便潜血検査も行います。
便潜血検査によって、潜血陽性であった場合は、大腸に悪性疾患の可能性があるため、下部消化管内視鏡を行います。
診断について
成人Still病の診断は、他の重要な疾患を除外することで診断します。
除外が必要な疾患とは、『感染症、悪性疾患、そして成人Still病以外の膠原病』です。
なぜなら、感染症、悪性疾患やその他の膠原病も、時に成人Still病の様な発熱、関節痛、皮疹などを認めることがあり、それらの治療と成人Still病の治療が異なるため、しっかりと除外することが重要なのです。
成人Still病の診断には、山口分類基準が世界的にも広く使われており、下記の表にまとめました。
大項目 |
1) 39℃以上の発熱が1週間以上続く |
2) 関節症状が2週間以上続く |
3) 定型的な皮膚発疹 |
4) 80%以上の好中球増加を伴う白血球増多(10000/mm3以上) |
小項目 |
1) 咽頭痛 |
2) リンパ節腫脹あるいは脾腫 |
3) 肝機能障害 |
4) リウマトイド因子陰性及び抗核抗体陰性 |
除外項目 |
1) 感染症(特に敗血症、伝染性単核球症) |
2) 悪性腫瘍(特に悪性リンパ腫) |
3) 膠原病(特に結節性多発動脈炎、悪性関節リウマチ) |
→ 診断のカテゴリー
大項目中2項目以上に該当し、かつ、小項目の各項目を含めて5項目以上に該当する場合に成人Still病と診断します。
ただし、大項目、小項目に該当する事項であっても除外項目に該当する場合は除外します
- 成人Still病は、自己炎症性疾患の一つである。
- マクロファージなどの自然免疫系が過剰に活性化し、炎症をおこし、発熱、関節痛、皮疹、筋痛などの症状を認める。
- フェリチンは、成人Still病の活動性を反映する。
- 診断のために感染症や悪性疾患を、しっかり除外することが重要である。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。参考になりましたら、高評価、コメントを頂けましたら嬉しいです?またTwitterのフォローもお願いします?
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※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。