〜 The Point 〜
- 治療は、臓器病変や症状ごとにアプローチする。
- 間質性肺炎や肺高血圧症は、生命予後に影響する重要な臓器病変である。
今回は、強皮症の治療について取り上げていきたいと思います!強皮症の治療も、他の膠原病と同じで認める臓器病変や症状ごとにアプローチしていきます。
具体的に、以下の症状についてそれぞれ説明していきます。
- 間質性肺炎
- 皮膚硬化が体幹にまで広範囲に及んでいる
- 肺高血圧症
- 末梢循環不全症状
- 消化器症状
- 関節炎
間質性肺炎
間質性肺炎は、強皮症の50〜70%にみられ、生命予後を規定する重要な臓器病変であるため、不可逆的な変化が起きる前に進行を抑制する必要があります。
主に、ステロイドやエンドキサン®︎(シクロフォスファミド)を使用します。
その他に有効性が報告されているものは、イムラン®︎/アザニン®︎(アザチオプリン)、プログラフ®︎(タクロリムス)、ネオーラル®︎(シクロスポリン)、セルセプト®︎(ミコフェノール酸モフェチル)がありますが、最も多くの検討が行われているのは、エンドキサン®︎であり、ステロイドに併用されるものには、エンドキサン®︎を選択する場合が多いです。
エンドキサン®︎は、症状に合わせて3回〜6回(1回の間隔は、2週間〜1ヶ月)行ったあとは、悪性腫瘍などの合併のリスクがあるため、プログラフ®︎(タクロリムス)やイムラン®︎/アザニン®︎(アザチオプリン)で維持療法を行うことが多いです。
皮膚硬化が体幹にまで広範囲に及んでいる
皮膚硬化のみでは、生命に危険を及ぼすことはないですが、生活の質(QOL:quality of life)は損なわれてしまいます。
症状が進み、肘や膝の動きが制限されることもあります。そうなってからの治療ではすでに遅いため、皮膚硬化の早期の段階では、プレドニン®︎(ステロイド)20〜30mgの投与を検討します。
進行が激しい場合や難治例では、メトトレキサートやネオーラル®︎(シクロスポリン)、エンドキサン®︎(シクロフォスファミド)を併用する場合もあります。
肺高血圧症
肺高血圧症は、強皮症の生命予後に関与する最も重要な合併症です。なので、強皮症の方は、1年に1回、肺高血圧症のスクリーニングとして、侵襲の少ない心臓エコー検査を行います。その結果によって必要な場合は、心臓カテーテル検査も検討されます。
軽症の場合は、ドルナー®︎(ベラプロスト)やトラクリア®︎(ボセンタン)が使用されます。
それでも効果が乏しい場合は、レバチオ®︎(シルデナフィル)やアドシルカ®︎(タダラフィル)などが使用されます。
また、内服でもコントロールが難しい場合は、持続静注薬としてフローラン®︎(エポプロステノール)というのも使用される場合があります。
末梢循環不全症状
末梢循環不全症状として、「レイノー現象」や「指尖部の潰瘍」があります。
それらの症状に対して、血管拡張薬が用いられています。
カルシウム拮抗薬、ARB、プロスタグランジン製剤の有効性が報告されています。カルシウム拮抗薬、ARBは通常血圧の薬として使用されています。
主な薬 | |
カルシウム拮抗薬 | アムロジピン、ニカルジピン、ニフェジピン(アダラート®︎)等 |
ARB | ロサルタン、カンデサルタン(ブロプレス ®︎)、テルミサルタン(ミカルディス®︎)、オルメサルタン(オルメテック®︎)、アジルバ®︎等 |
プロスタグランジン製剤 | アルプロスタジルアルファデクス、リプル®︎(アルプロスタジル)等 |
また、ユベラ®︎(トコフェロールニコチン酸)や抗血小板薬であるプレタール®︎(シロスタゾール®︎)等も使用されます。
ユベラは、副作用も少なく使われている方も多いかと思います。
消化器症状
強皮症の90%以上に消化器病変が有すると言われており、食道病変が大半を占めており、蠕動運動(消化管の動き)の低下や逆流性食道炎が主体です。
逆流性食道炎に対しては、プロトンポンプ阻害薬(俗にいうPPI)やH2受容体拮抗薬が使われます。
主な薬 | |
プロトンポンプ阻害薬(PPI) | ラベプラゾール(パリエット®︎)、ランソプラゾール®︎(タケプロン)、ネキシウム®︎、タケキャブ®︎等 |
H2受容体拮抗薬 | ガスター®︎(ファモチジン)、タガメット®︎(シメチジン)等 |
関節炎
鎮痛薬で効果が乏しい場合は、一般的な抗リウマチ薬による治療を行っていきます。
全てなし
以上の症状を認めず、抗体陽性のみの場合、皮膚硬化の進行や、内臓病変の出現に留意して経過観察を行なっていきます。
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