こんにちは、今回は「高脂血症(脂質異常症)の治療薬」について取り上げていきたいと思います。
私も、スタチン薬を飲んでいますが、高脂血症にはどういった治療が推奨されているか気になります。
高脂血症治療の流れ
まずは、高脂血症(脂質異常症)の治療の流れについてご紹介します。
高脂血症の治療の流れについては、2022年版動脈硬化性疾患予防ガイドラインのフローチャートを参照します。
- 冠動脈疾患の既往がある場合は、二次予防の治療介入を行う。
- 冠動脈疾患の既往がない場合は、糖尿病、慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患があれば、高リスク群として生活習慣改善を含めた治療介入を行う。
- いずれも満たさない場合は、久山町スコアを計算し、低リスク、中リスク、高リスクに分類する。
- それぞれのリスク毎に応じた目標値を参考にし、生活習慣の改善、また必要によって薬物療法を開始する。
STEP①:高脂血症(脂質異常症)の治療フローチャートを参考にする
〈 図:動脈硬化性疾患予防からみた脂質管理設定のためのフローチャート1) 〉
STEP②:久山町スコアを算出する
〈 図:久山町スコアの算出1) 〉
STEP③:それぞれのリスク群での脂質管理目標を参考にする
吹田スコアでリスク分類した後は、脂質管理目標値を参考にし、それぞれの目標値に準じて治療介入を検討します。
〈 図:リスク区分別脂質管理目標値1) 〉
➡︎ LDLコレステロールやTGが目標値以上の場合は、❶ まずは生活習慣の改善を行い、必要に応じて❷ 薬物療法を考慮します。
❶ まずは生活習慣の改善
脂質異常症の治療の目標は、『 動脈硬化による心血管イベント発症を予防すること 』です。
そのために、生活習慣を改善することがまずは一番大切です。
スタチン薬を使用すれば、LDLコレステロールを十分低下させることはできます。
なのですが、心血管疾患の発症には、脂質異常だけでなく、血圧、糖尿病など多くの要素が関与しています。
そのため、心血管イベントの発症を予防することを目標にしたときに、LDLコレステロールの値だけでなく、生活習慣を全体的に改善すること(食事療法、体重管理、禁煙、節酒)がとても重要となってきます。
❷ LDLコレステロールの治療
高脂血症(脂質異常症)の薬物療法には、
まずは、『 LDLコレステロールの低下 』を目標にします。
これは、治療によるアウトカム改善(心血管イベントの予防)が最も確立しているためです。
ここで、生活習慣の改善が大切と言ったものの、LDLコレステロールは、約7割が肝臓で合成されるため、どんなに頑張っても食事療法ではなかなか改善しにくいということが事実あります。
そのため、高LDLコレステロール血症を改善させるための第一選択薬として、
『 スタチン 』という高脂血症治療薬を使用します。
- クレストール®︎(ロスバスタチン)
- リピトール®︎(アトルバスタチン)
- リバロ®︎(ピタバスタチン)
- メバロチン®︎(プラバスタチン)
- リポバス®︎(シンバスタチン)
- ローコール®︎(フルバスタチン)
スタチンにもたくさん種類あるのですね。
どれを選べばいいのでしょうか?
スタチンには、それぞれ強さがあり、LDLコレステロールの値に応じて薬物選択することが理想的です。
スタチンにも強さ(力価)がある
それでは、スタチン毎の強さ(力価)についてみてみましょう。
例えば、メバロチン®︎(プラバスタチン)やクレストール®︎(ロスバスタチン)でも、強さが違い、メバロチン®︎はスタンダードに該当し、クレストール®︎の場合はスーパーストロングになります。
スタチンの強さ(力価)の違い
実際には、それぞれのスタチン毎に用量があるため、用量によってさらに力価が変わってきます。
具体的に、どの用量でどれぐらいの力価があるかは、下の図を参考ください。
〈 図:スタチン毎の力価比較表 〉
〈 スタチンの選択 〉
- 重度の高LDLコレステロール血症がある ➡︎ リピトール®︎(アトルバスタチン)、クレストール®︎(ロスバスタチン)を選択する。
- 軽度の高LDLコレステロール血症がある ➡︎ メバロチン®︎(プラバスタチン)、リポバス®︎(シンバスタチン)を選択する。
❸ 中性脂肪の治療
LDLコレステロールは目標値を達成していても、中性脂肪(TG:トリグリセリド)が上昇している場合もあります。
ただし、TGについては、LDLコレステロールよりも食事による変動が大きく、生活習慣、とりわけ食事療法によって改善することも十分見込めます。
また、LDLコレステロールほどは心血管イベント予防のアウトカムが確立してはおらず、薬物療法開始には十分な検討を要します。
中性脂肪(TG)の薬物療法には、まずは『 フィブラート系薬 』が使用されます。
フィブラート系薬
フィブラート系薬は、TG低下に効果的なだけでなく、2型糖尿病発症予防効果も知られており、2型糖尿病やインスリン抵抗性がある場合にも選択しやすいというメリットがあります。
ただし、スタチンとフィブラート系薬との併用は、横紋筋融解症のリスクを高めるので慎重に投与することが大切です。
- リピディル®︎/トライコア®︎(フェノフィブラート)
- ベザトール®︎(ベザフィブラート)
- クロフィブラート®︎(クロフィブラート)
- フィブラート系薬には、2型糖尿病発症予防効果も知られており、2型糖尿病やインスリン抵抗性がある場合には特に選択しやすい。
- スタチンとフィブラート系薬の併用は、横紋筋融解症のリスクを高めるため、慎重に投与する。
- TG ≧ 500 ~ 1000 mg/dLの場合は急性膵炎のリスクが上昇するため、フィブラート系薬から処方するのが良い。
❹ 最新の高脂血症治療薬
最近では、強力なLDLコレステロール低下作用を有する、PCSK9阻害薬である『 レパーサ®︎(エポロクマブ) 』や、
強力なTG低下作用を有する選択的PARαモジュレーターである『 パルモディア®︎(ペマフィブラート) 』もといった高脂血症治療薬も登場しています。
また、パルモディア®︎はTG低下作用に加えて、善玉コレステロールと通称呼ばれるHDLコレステロール増加作用も併せ持っています。
まとめ
- 高脂血症(脂質異常症)の治療は、2022年版動脈硬化性疾患予防ガイドライン1)のフローチャートを参考にする。
- 高脂血症(脂質異常症)の治療の基本は、生活習慣の改善だが、薬物療法の第一選択薬は、LDLコレステロールを改善させる『 スタチン 』が使用される。
- スタチンには、薬剤毎に力価があるため、LDLコレステロールの値によって使用するスタチンを選択する。
- フィブラート系薬は高TG血症に対して用いられるが、2型糖尿病発症予防効果も期待できる。
- スタチンとフィブラート契約の併用で横紋筋融解症のリスクが上昇するため、併用する場合は慎重に服用する。
- 高脂血症(脂質異常症)の治療は、2022年版動脈硬化性疾患予防ガイドライン1)のフローチャートを参考にする。
脂質異常症治療薬の特性と副作用 一覧
〈参考〉
- 1) 日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.
- 日本糖尿病学会編:糖尿病専門医研修ガイドブック 改訂第8版 診断と治療社
- 藤村昭夫 類似薬の使い分け 改訂版 羊土社
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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